豚肉の肉じゃがに、ニンニクを初めとした中華的な味つけを加えたもの。濃厚でやさしいコクがあり、これは死ぬ。
肉じゃがは、ふつうにうす味のだしで炊けば、もちろんうまい。べつに決して、これに文句をつけようと言うわけではないのである。
しかしこの肉じゃがに、ニンニクやゴマ油、オイスターソースなどを使って中華風のコクをつけると、とてもリッチな味になる。
日本は鎌倉時代から長いこと、ニンニクの使用が禁止されてきた。世界中で料理の種類は数あれど、ニンニクを使わない料理は日本だけではなかったか。
明治になってそれは解禁されたものの、長い期間にわたって形作られた食習慣は、そう簡単には変えられない。
それで今でも、日本でニンニクを使うのは、中華や韓国料理、イタ飯など海外の料理だけ。和食については相変わらず、ニンニクを使わない領域として残されている。
でももう、使ってもいいのだ。だいたいニンニクは、体を温めることこの上ない。
これはニンニクに含まれる硫化アリルの一種である、「アリシン」によるのだそうだ。
体を温めるためには、糖質が体内でエネルギー物質に分解される必要がある。この糖質からエネルギーへの分解を、豚肉などに豊富にふくまれている「ビタミンB1」が促進する。
ビタミンB1は重要な栄養で、足りないと脚気(かっけ)になる。
このビタミンB1のエネルギー分解促進作用を、ニンニクのアリシンは、さらにパワーアップするそうだ。
ビタミンB1とアリシンが結びつくと、「アリチアミン」というものになる。ビタミンB1はアリチアミンになることで、吸収がきわめて良くなり、血中ビタミンB1濃度の上昇が顕著で長時間つづくとのこと。
このアリチアミン、武田薬品の疲労回復サプリ「アリナミン」の主成分だと言うのだからオドロキだ。
ニンニクにはその他にも、殺菌力が高くて感染症の予防効果があったり、がんの予防効果まであったりするそうだ。まさに「医食同源」の鏡みたいな存在だ。
病気になれば、病院へ行ってカネもかかる。
だったらば、ニンニクをもりもり食べない手は、どう考えてもないのである。
それにはやはり、ニンニクを使わないことになっている日本食の領域に、どうニンニクを取り入れるかを考える必要があるだろう。
それをおれは、(和的中華風あらため)「中華的」「韓国的」料理と称し、日々研究しているわけなのだ。
たとえば肉じゃがの場合なら、味つけの核になるのは「みりん」と「醤油」。ここにニンニクを加える場合、まず「コショウ」も加えるのがおすすめなのだ。
ニンニクとコショウの相性のよさは、ステーキを塩コショウに焦がしたニンニクで食べるのを想像すればわかると思う。
みりんと醤油にニンニクとコショウ、これがまず日本食にニンニクを加えるための、最小限の組み合わせ。在日コリアンの料理でも、このような味つけはあるようだ。
ここにさらに、ゴマ(油)と唐辛子を加えると、アクセントとして非常にいい。
だしは、昆布と削りぶし(または煮干し)でふつうに取っても問題ない。でもこれを、干し椎茸のもどし汁とオイスターソースで置き換えれば、パンチが効くわけである。
きのうは最後に軽くトロミをつけた。
ニンニク入りであってもなくても、肉じゃがにトロミをつけるとうまいのは知れた話だ。
まず干し椎茸のだしを取る。
干し椎茸は4枚入れたかったが、見たら2枚しかなかった。問題はなかったけれど、あるなら4枚入れるといい。
鍋に、
- 水 2+2分の1カップ(2カップのだしが取れる)
- サッと洗った干し椎茸(中) 4枚
を入れて、フタをして中火にかけ、煮立ったら火を止めて15分くらい置く。
鍋(フライパンでももちろんいいが、アルマイトで問題ない)に、
- サラダ油 大さじ2
- みじん切りのニンニク 1かけ
- 種を取り出してちぎった赤唐辛子 1本
を入れて弱火にかけ、2~3分、ニンニクがきつね色になるまで熱する。
一旦火を止め、豚うす切り肉(きのうは肩ロース)150グラムを、できるだけ重ならないように広げて鍋に入れ、
- 塩 1つまみ(小さじ2分の1)
- コショウ 少々
を振って、ふたたび弱火にかけてじっくり炒める。
豚肉に火が通ったら、
- じゃがいも 3個
- ニンジン ジャガイモ1個大くらい
- 玉ねぎ 1個
- 汁気をしぼり、2~3センチ大に切った干し椎茸
を2~3センチ大に切って入れ、さらに1~2分、全体に油がなじむまで弱火で炒める。
- 干し椎茸のもどし汁 2カップ
- 酒 大さじ2
- みりん 小さじ2
- 淡口醤油 大さじ1
- オイスターソース 大さじ1
- コショウ 1~2ふり
を入れて、じゃがいもが好みのやわらかさになるまで、10分程度、弱火で煮る。
味をみて、必要なら塩を足す。
中火にし、
- 片栗粉 大さじ1
- 水 大さじ2
をスプーンで混ぜながら入れてトロミをつける。
皿に盛り、青ねぎと、粗挽きコショウ・わりとたっぷり、ゴマ油・ほんのちょびっとをかける。
これは、死ぬ、、
濃厚なコクがある、やさしい味。
干し椎茸が、また言うまでもなく、じゃがいもやニンジンにとてもよく合う。
あとは、わかめスープ。
鍋に水、頭とワタを取った煮干し、つぶしたニンニク、乾燥わかめを入れて5~10分くらい煮て、酒とみりん・ちょびっと、淡口醤油・少々、塩、それにコショウで味をつけ、お椀によそって、青ねぎとゴマをふる。
酒は、焼酎水わり。
シメは、白めし。
きょうは用があったから、きのうは早めに寝るつもりだった。
でも飲めばそれも忘れて、いつもよりもっと遅い時間に寝てしまうのも、酒が何でも忘れさせる作用を持つ以上、仕方ないのだ。
「用はきちんと足してよね。」
そうだよな。