新宿西口・思い出横丁にある「らーめん若月」。いかにも昭和のラーメンで、大変うまい。
昔は終戦後の闇市に端を発する「横丁」が、東京のあちこちにあったみたいだ。またそこまで古くなくとも、小さな飲み屋がひしめき合うように軒を並べる所はたくさんあった。
でもそれらの多くは焼けたり、バブルで地上げにあったりして、いまはもう残っていない。
その中にあって「思い出横丁」は、今に残る数少ない横丁の一つだ。
「思い出横丁」という名前はわりと最近名付けられたようで、前は「しょんべん横丁」と呼ばれていた。トイレがなかった時代には、酔っぱらいが店の前でしょんべんをしたからなのだとか。
北側と東側の一角は、15年ほど前に火事で焼け、いまは新しくなっている。でもその他の場所は、相変わらず昔ながらの、バラックのような古い建物が並んでいる。
きのうは高校の同窓会があり、新宿で飲んだ。行かれないと思っていたのが、親の介護の用事が急に入り、おかげで参加できることになった。
二次会が終わり、「ラーメンが食べたい」と思いながら歩いていた。
新宿にも、もちろんラーメン屋はたくさんある。でもおれは、飲んだあとに食べるのは、最近の新しいラーメンではなく、昔ながらの、シャバっとしたうすいスープのラーメンが好きなのだ。
そうしたら、見つけたのだ、、、
らーめん若月。
この店構えからも、また新宿にありながら480円という値段からも、おれ好みのうすいラーメンであるのは間違いないと思われた。
酒は、ビールと清酒、ウイスキーのみ。ウイスキー・300円を頼んだら、氷だけ入れたロックで出てくる。
「水割りで」と言ったら、「うちのはトリスなんですが?」との答えだった。水も一緒に出てきたから、自分で好きなだけ水を足すシステムになっているようだ。
「ワカメ(三杯酢)」220円を頼んでみた。
そうしたら、本当にワカメだけが、三杯酢にゴマで出てくる。
飾り気のない、まさに直球そのものという味。「これはいい」と思い、餃子も頼んだ。
餃子・380円は、肉少なめ・野菜多めで、ニンニクもあまり入っていないと思う。
この淡白な味が、いかにも「昭和」な感じがする。
そしてラーメン・480円。
これが、スゴかった。
まずスープは、予想通りシャバっとうすい。胃の負担にならず、飲んだあとには最高だ。
でもシャバっとうすいラーメンは、ただうすいだけではダメなのだ。うすいながらも、やはりきちんと味わいがなくてはいけない。
そこでこのラーメンの場合は、「酢」が少し加えられているようだった。これがいいアクセントになっている。
そして、特筆すべきは麺。
自家製麺なのだそうで、モチモチとした平たい縮れ麺。
この麺はほんとにうまくて、今どきの新しいラーメンと比べても、まったく引けをとらない感じだ。
だからこのラーメンは、麺が主役と思えば、たとえ酒を飲んだあとでなくてもスープのうすさは気にならず、しかもそれが480円なのだから、コストパフォーマンスも最高だ。
帰り際、「この店は長いんですか?」と聞いてみたら、「長いです」と、直球そのものの答えが返ってきた。
長い店は、さすがダテに続いているわけではないと、感心した。
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