このごろ「岐阜屋」にハマっているのだ。
東京に来ると、交通の便の都合上新宿に泊まることが多い。「新宿で何を食べるか」を考えると、それが夜はもちろん、朝であろうが昼であろうが、岐阜屋へ行きたくなってしまう。
「中華が好き」というのはある。ニンニクと豚肉が入った中華料理は、体を温め、疲れをとる効果が高いから、年を取ってくるとどうしても食べる頻度が上がってくる。
でも中華の店も色々とあるわけで、やはり岐阜屋。
まずお店の設定自体がいいのだ。基本は「酒を飲む場所」なのである。
午前中に行った時でも、だいたいのお客さんは酒を飲んでいる。しかもカウンター席のみだから、おれのように一人で飲むことが多い者に打ってつけというわけだ。
雰囲気がざっくばらんなのもいい。もちろん掃除は行き届いているものの、「小ぎれいにする」という概念は皆無と見える。
何といっても店があるのは、昭和のドヤ街・思い出横丁。横丁好きのおっさんにはたまらない。
もちろんのこと、値段は安い。
主力メニューであるこのラーメンなど、420円。量は一人前たっぷりある。
スープは東京流の澄んだ鶏がらだし。平打の麺にたっぷりのメンマともやし、それにチャーシューと海苔がトッピングされていて、酒のシメにはもってこいというやつだ。
といってここは、看板には「ラーメン・餃子」とあるものの、「ラーメン屋」ではない。「中華料理屋」だといえる。
ラーメン屋と中華料理屋の分かれ目は、やはりまず一つには「木クラゲを使うかどうか」ではないか。
この店の人気メニューは、木クラゲと卵炒め。
たっぷりの木クラゲが入った、超本格的な味。
それからタンメンや焼きそばなどにも、木クラゲは使われている。
次に豚足などいわゆる「豚肉」以外のメニューがあること。
この店には、「豚耳中華和え」というメニューがある。
キャベツではなく白菜が使われることや、「トマトと卵炒め」があることなども、ポイントの一つとなるかもしれない。
さらにやはり、酒は紹興酒があることも必要だろう。
このように岐阜屋はお店の設定自体が、
「横丁にある安価でざっくばらんな飲み屋でありながら、わりと本格的な中華料理が食べられる店」
なのだ。
こういう店は、意外に少ないのではないだろうか。
そしてもちろん、味はいい。
今回特に感動したのは、まず水餃子。
水餃子というと通常は、分厚い皮の餃子をスープで煮たものだと思う。具は入っていないのが普通ではではないか。
ところがこの店では、たぶん「焼き餃子とおなじ薄い皮の餃子を使うから」ということも理由だと思うけれど、サッとゆでた餃子に、タンメンなどと同様の野菜を炒め煮したスープ(タンメンよりも野菜の量は少なめ)がかけられている。
これが酒に合うことこの上なく、きのうはこれだけで紹興酒を2杯飲んでしまった。
それで値段は、焼き餃子にプラス70円の470円だというのだから、ビックリだ。
それから麻婆豆腐も感動した。
麻婆豆腐は豆板醤にくわえて甜麺醤(八丁みそに砂糖などを加えたもの)を味のベースとして使い、中国山椒をかけるのが代表的な作り方。
ところがこの店ではみそは使わず、醤油ベースのうす味になっている。さらに山椒ではなく、粗挽きコショウがたっぷりとかかっている。
これがスッキリとした味で、また酒によく合うのである。
以上のように岐阜屋は、お店の設定も料理の味も、おれのような「酒飲みのおっさん」のためにあるような店なのだ。
今回2泊3日の東京での滞在で、4回も行ってしまったのも仕方がないというものだ。
ちなみに岐阜屋は、思い出横丁の東側とまん中の2つの筋に面していて、店内は3段くらいの階段で上下に分かれている。
どちらも料理は同じだが、東側、下のスペースの方が多少ゆったりとしていて、さらに常連のお客さんは、そちらのほうが多いように思えるので、ゆっくりと酒を飲むならそちらがおすすめだと思う。
岐阜屋
住所 東京都新宿区西新宿1-2-1
電話 03-3342-6858
営業時間 [月~木・日]9:00~翌1:00、[金・土]9:00~翌2:00
定休日 無休