陳建民の素朴なレシピをリスペクトした、シンプルな調味料のみを使ったマーボー豆腐。仕上げに粗挽きコショウをふると、足りないところは全くない味になる。
自炊の天才であるおれは、クリスマス・イブでもマーボー豆腐。
だいたい正月とはちがってクリスマスなど、欧米コンプレックスの日本人が煽られ、乗せられているだけなのだから、いつも通りの生活をすればいいのである。
それでこのマーボー豆腐、陳建民のレシピを参考にして作った。
陳建民は、陳建一のお父さん、陳建太郎のおじいさんに当たる人。日本に四川料理を紹介し、日本における「四川料理の父」といわれている。
陳建民は、本場四川の料理を、日本人に合うように色々アレンジしたそうだ。マーボー豆腐も、現在日本で主流となっているような形のものは、陳建民が発祥らしい。
ところが上の、1981年に「きょうの料理」で放映されたレシピを見ると、これがいまのレシピと比べ、だいぶシンプルなのである。
いまのレシピは、息子の陳建一が2005年に公開したレシピが、わりと標準くらいになるのではないか。豆板醤と甜麺醤、それに豆鼓(ドウチ)が基本の調味料で、これにスープを加えて水切りした豆腐を煮込み、最後に花椒(ホワジャオ)をかけるようになっている。
それにたいして陳建民のレシピは、豆鼓と花椒は使わない。豆板醤と甜麺醤に、しょうゆとコショウのみ。
スープも使わず、豆腐から出てくる水気とたっぷりの油、それに調味料の水分だけで煮込むようになっている。
だいたい豆鼓だの花椒だの、マーボー豆腐以外に使い途を知らないわけで、そうそうしょっちゅうマーボー豆腐を作るわけでもなし、買っても棚の肥やしになるに決まっている。
そういう意味で、上のシンプルな陳建民レシピ、とても好感が持てるのだ。
ただし作るにあたって、陳建民のレシピから、いくつかの点を変更した。
まず一人・2食分で、「豆腐2丁」は多すぎるから、1丁へ。逆に豚ひき肉は、100グラムでは少ないから、150グラム(まあ、スーパーのパックがその大きさということもある)とした。
それからはじめに炒めるとき、まず豚ひき肉を炒め、あとからニンニクや調味料を加えるのは、中華料理店では火が強く、いっしょに入れるとニンニクなどが焦げるからだ。
家庭では、全部一緒に入れてしまい、弱めの中火にかけるようにすれば問題ない。
甜麺醤は、八丁みそとゴマ油、それにみりんで代用する。それから炒めるときにしょうがを加え、最後に花椒がわりに、粗挽きコショウをたっぷりかける。
こうして作った陳建民リスペクトのマーボー豆腐、じっつにウマイから、ぜったい試してみるべきだ。
フライパンに、
- サラダ油 大さじ2
- 豚ひき肉 150グラム
- みじん切りのニンニク 2かけ分
- みじん切りのしょうが 1~2センチ大
- 豆板醤 大さじ1
- 八丁赤出しみそ 大さじ1
を入れ、弱めの中火にかけて4~5分、水気がパチパチと弾ける音がやや収まってくるまでじっくり炒める。
マーボー豆腐は、ここでひき肉の肉汁をきちんと飛ばしてしまうのが、最大のポイントだ。
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 醤油 大さじ3
- コショウ 1ふり
- 1.5~2センチ大に切った木綿豆腐 1丁
を入れ、弱火でフタをして10分ほど、くつくつ煮込む。
- 粗みじんにした長ねぎ 2分の1
を加え、サッと混ぜたら、
- 片栗粉 大さじ1
- 水 大さじ2
の水溶き片栗粉を、全部だと多いかもしれないので、加減を見ながら加えてトロミをつけ、最後に
- ゴマ油 大さじ2分の1
くらいを鍋肌からまわし入れる。
マーボー豆腐は、この水溶き片栗粉を入れるところが鬼門なのだ。
豆腐をくずしてしまう可能性があるからで、豆腐はスプーンやお玉で混ぜるのではなく、鍋全体を揺するようにしながら混ぜるようにするのがコツ。
皿に盛り、粗挽きコショウをたっぷりかける。
豆鼓や花椒などを使わなくても、足りないところは全くない味。
あとは、具だくさんのわかめスープ。
水にニンニク1かけ、頭とわたを取った煮干し1つまみ、乾燥わかめ2~3つまみを入れて5分くらい煮て、酒・少々、みりん・ほんの少々、しゅうゆ・少々で味をつけ、えのきと長ねぎをサッと煮て、お椀によそってゴマをふる。
それに、白めし。
酒は、焼酎水わり。
というわけで、きのうもまた飲み過ぎるのだ。
でもクリスマス・イブなのだから、このくらいは仕方ないのである。
「都合がいいね。」
ほんとだな。
◎関連コンテンツ