きょうも酒が残っている。きのう、飲み過ぎたからだ。
だいたい一人で飲むのに、翌日に残るほど飲む必要はないのである。誰かと一緒なら、つい盛り上がってしまったり、つき合いだったりで、杯を重ねることはある。でも一人の酒は、ただ淡々と飲むだけだから、いつでもやめられそうなものだ。
ところが、そうはいかなくなるのだ。
まず食事の支度をはじめる前に、「ちょっと一杯」と思って飲む。そうすると、「もう一杯」となるのは、まあしょうがない。
問題は、食事の支度のやり方にある。
わざとゆっくり作ってしまうのだ。
これはゆっくり作れば作るだけ、酒がたくさん飲めるからだ。食事がまだでき上がっていなければ、「もう一杯飲むのも仕方ない」ということになる。
それで、効率は、一切考えない。
昔はカセットコンロ1口で料理を作っていたおれも、いまは2口のガス台を持っている。だからやろうと思えば、2つの料理を並行して作ることもできる。
でもやらない。少しでもたくさん飲むためだ。
だしを取りながら、それを上からじっと眺めていたりする。だしを取っているあいだなど、することは何もないわけだから、野菜を切ったりすればいいのだ。
それをわざわざ、野菜を切るのはだしを取り終わってからにする。
さらに、だしを取っているあいだに、次に何をするべきなのか、考えもしない。だしを取り終わってから、「さて何を入れるんだっけ?」と考える。
しかも考えるたびに、「考える前に酒を作ろう」となるのである。
これでは飲み過ぎるのも、当たり前というものだ。
言うまでもなく、できた料理もわざとゆっくり、チビチビ食べる。
これが毎晩なのだから、
「おれはどれだけ時間をムダに使っているのだ」
と、自分で自分を殴りたくもなるわけだ。
ポパイ炒めは1つの王道
さてそうやって、わざとゆっくり作った料理。きのうはポパイ炒めにした。
「ポパイ炒め」という名称は、京都に来てはじめて聞いた。どこの中華料理屋でも、ほうれん草と豚肉、卵を炒めたものは、「ポパイ炒め」と呼ばれている。
これは全国的なことなのだろうか?
「餃子の王将」がこの名前を使っているそうだから、それにより、広まったのかとも思っている。
まあ名前はどうであれ、ほうれん草と豚肉、卵を炒め合わせたものが王道であるのはまちがいない。
ほうれん草は、わりと相性のいいものが少ない野菜だ。下手に合わせてしまうとおいしくないから、代表料理は単独のおひたし。
ポパイ炒めは、そのほうれん草と相性がいいものを、「すべて集めた」と言ってもいいくらいではないか。
ポパイ炒めの作り方
作るのは、とくべつ難しいことはない。
コツは、「ほうれん草を炒め過ぎない」ことで、ほうれん草をフライパンに入れたら、あとは「和える」ような気分で混ぜれば、それで十分火が通る。
フライパンにサラダ油・大さじ1を入れて中火にかけ、溶き卵・3個をまず炒める。
あまり細かく混ぜないで、大きめにまとめて皿にとり出す。
あらためてフライパンに、
- サラダ油 大さじ1~2
- たたき潰したニンニク 1かけ
- 鷹の爪 1本
を入れて中火にかけ、2~3分、ニンニクがきつね色になるまでじっくり熱し、油に味をつける。
一旦火を止め、豚こま肉・200グラムを広げて入れる。
塩・1つまみ(小さじ2分の1)とコショウ・少々を振って、ふたたび中火で、色が変わるまでじっくり炒める。
豚肉の色が変わったら、ざく切りのほうれん草・1把と、とり出しておいた卵を入れて、全体を混ぜる。
ほうれん草は洗ったら、水気をよくふき取ることが必要。水気をふき取るには、固くしぼった濡れ布巾が一番やりやすい。
ほうれん草に油がまわったら、(しんなりするのは待たないで)、合わせておいた調味料、
- オイスターソース 大さじ1
- しょうゆ 大さじ1
- 酒 大さじ1
- 片栗粉 小さじ1
を入れる。
全体を混ぜ、味がなじんだところで火を止める。
[afTag id=36194]
酒もご飯もいくらでも進むことは請け合い
ほうれん草は余熱でも火が通るから、グズグズしないですぐに皿に盛るのもポイントだ。
ほうれん草のクセのある味に卵と豚肉がよく合って、酒もご飯もいくらでも進むことはうけあいだ。
あとは、鶏肉の赤出し。
煮干しだしに酒・少々、赤出しみそで味をつけ、まず鶏肉と油あげ、それに玉ねぎ、最後にシメジを煮る。
それにご飯。
酒は、栄川。
ご飯は、酒を半分くらい飲んだところで炊き始めることにしている。
これをまた、わざと忘れて、炊き上がるのが遅れた分、さらに飲もうとするのだから、酔っぱらいは本当に手に負えない。
「100回死んで。」
そうだよな。