甘露煮はイワシやサンマを料理するのに定番のやり方で、骨までやわらかくなり、食べられる。味つけは実山椒を使うのが王道だが、梅干しやショウガでもおいしくできる。
ただしこの甘露煮、圧力鍋を使わないのがおすすめなのだ。モソモソとした仕上がりになるからで、圧力鍋を使うくらいなら、甘露煮など作らない方がいいと思うほどだ。
甘露煮は完全に、「圧力鍋で作るもの」となっているのではないか。グーグルで「いわし」を検索しても、関連キーワードの上位に「圧力鍋」が登場する。
しかしこれは、圧力鍋メーカーの宣伝の成果だと想像する。外国で開発された圧力鍋を日本で売るため、日本食のメニューとして甘露煮が選ばれたのだろう。
甘露煮を圧力鍋を使わずに作るポイント
甘露煮を、圧力鍋を使わずに作る際のポイントは、2つある。一つは「長い時間煮ること」で、それによって骨がやわらかくなる。圧力鍋は、この長い煮時間を短縮してくれるというわけだ。
しかし同時に、もう一つの大事なポイントがあり、それは「火をできる限り弱くすること」なのである。
肉や魚のタンパク質には、「分水作用」と呼ばれるものがある。温度が上がるに従ってタンパク質が変性し、ある温度を超えると保持していた水分を放出して、収縮をはじめるのだ。
この分水作用が始まるのが、68℃なのだとか。甘露煮では火を弱くして、この温度をできるだけ上回らないようにすることで、骨までやわらかくなるのと共に、イワシやサンマの脂が乗った、プリプリとした食感を楽しむわけである。
ところが圧力鍋では、圧力をかけることにより、温度を100度以上に上げるわけだ。そのためタンパク質は完全に変性し、食べ応えはモソモソとしてしまう。これはほとんど「台無し」と言っていい。
圧力鍋を使うくらいなら、甘露煮など作らない方がいいと思うほどだ。
甘露煮を圧力鍋を使わないで作る場合、たしかに1~2時間がかかる。しかし煮ている最中、することは全く何もないのだから、その間は他のことをしていればいいわけだ。
それだけのことで、極上の食べ応えが楽しめる。
何でも時間を短縮すればいいというものではないのである。
甘露煮は実山椒で味付けをするのが王道
甘露煮は、実山椒で味つけをするのが王道で、これは山椒の産地の名前をとって、「鞍馬煮」「有馬煮」などと呼ばれる。
実山椒はシーズンの時にさっと湯がいて冷凍しておけば、2年くらいは平気で使える。
実山椒がない場合には、細切りにしたショウガが完全に代用になるし、穴を開けた梅干し2~3個を使ってもいい。
梅干しを使う場合には、塩辛いから醤油を控えめにすることと、酢は入れない(山椒、ショウガの場合は入れる)ことがコツとなる。
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イワシ甘露煮の作り方
イワシは、頭とわたを付けて売っているものは、そのまま煮てしまっていい。サンマ同様、わたの苦味がまたうまいわけである。
鍋に10センチくらいのだし昆布を敷き、指でやさしく洗ってウロコを取ったイワシをならべる。
水をイワシがかぶるくらいに入れ、
- 酒 大さじ3
- みりん 大さじ3
- 砂糖 大さじ3
- 酢 大さじ1(骨をやわらかくする効果がある)
を入れ、火にかける。
沸いてきたら弱火にし、出てきたアクをていねいに取る。
アクが取れたら、実山椒・大さじ1くらいを入れて落としブタをし、たぶん最弱の弱火、ごくごく小さく「フツフツ」と沸き立ってくるくらいの火加減を保ちながら、15分くらい煮る。
15分煮たら、醤油・大さじ3を入れて、さらに煮る。計1時間煮れば、もう骨はやわらかくなっているから、あとは汁気がほとんどなくなるまで、弱火のまま煮詰めていく。
最後に醤油・小さじ1をふりかけて、火を止める。最後の醤油は、風味をつけるためである。
常備菜にするのもおすすめ
頭と尻尾以外は、すべて食べられる。
日持ちがするから、たくさん作って常備菜とするのもいい。
あとは、とろろ昆布の吸物。
厚揚げのおろしポン酢。
厚揚げはフライパンで表と裏をさっと焼き、大根おろしとおろしたショウガ、青ねぎ、味ポン酢をかける。
たたきキュウリの梅酢和え。
キュウリはすりこ木でたたいて割り、食べやすい大きさにちぎり、一つまみの塩でもんで10分くらい置いて、水洗いし、水気をふき取る。
梅酢と砂糖少々で和える。
酒は、冷や酒。
暖かくなり、窓を開け放しているから、野良猫が家の中まで入ってくるのである。
きのうもベッドの上で、気持ちよさそうに昼寝をしていた。
飯をつくり始める時間になってもまだいたから、きのうはイワシを煮ることにしていたし、「これはただ事では済まないな」と思ったら、そのうち自分からいなくなってくれたから、事なきを得た。
「部屋がノミだらけになるよ。」
そうだよな。