宵々山で酒を飲んだ。
宵山は、面白いものはちょっと寂れたあたりにあるのである。
祇園祭は7月に入ると、様々な神事が始まるのだけれど、大々的なものはまずは「宵山」だ。四条通と烏丸通、および周辺の広大な一帯が歩行者天国になり、膨大な数の出店がでて縁日になる。
京都へ来て5年目のぼくは、宵山も5回目なのだが、最近は、自分なりの楽しみ方を見つけている。
面白いものは、「ちょっと寂れたあたりにある」のである。
まずはビール。
出店で買うと高いから、これはコンビニで買うのが正しい。ロング缶2本を買い、1本はバッグに入れておく。
ビールを手に、堂々と街を歩けるのが、お祭りのいいところである。
四条大宮のロータリーでは、音楽イベントが催されている。
これは去年までは記憶がないのだが、今年から始まったのだろうか。
脇にある出店で、腹ごしらえ。
1本300円は、安いだろう。
四条通を東へ行き、さらに買い食い。
ハモの落とし、500円。
宵山の楽しみは、第一に山鉾を眺めることだ。それぞれきれいに飾られ、所定の場所に据えられている。
全部は見切れないから、四条通にあるものだけを見る。
傘鉾。
郭巨山。
月鉾。
函谷鉾。
鉾はビルと同じくらいの高さがあるものもあり、やはりそれなりの見応えがある。
宵山で見るものに、あとは裏通りにあるお金持ちの家々が、その日だけ公開する「お宝」がある。これらもやはり、それなりの見応えはあるのだが、もうこれまで何度も見ているからきのうは省略。
烏丸通を北上する。
沿道にはプロの出店が軒を並べているのだが、これらはいずれも、全国どこにでもあるものだから、立ち寄らない。
宵山の出店には、いくつかの種類がある。まずはプロの出店だが、これらはそこで売っているものをよっぽど食べたければ行くのもいいが、「面白さ」はないだろう。
次に飲食店が出す出店がある。
これらはその飲食店独自のものだから、プロの出店よりは面白いけれど、飲食店は普段から営業しているのだから、「宵山ならでは」とまでは言えないことになる。
面白いのは、まずは「飲食店以外のお店がだす出店」である。本業ではないのだから、出店をだす方も、仕事よりは「楽しみ」でやっている。
きのうも美容院が、子供向けに「ザリガニ釣り」を出していた。
この類の出店では、お店の人に話しかけると楽しい時間を過ごせることが多いのである。
しかしこの類の、のんきな出店は、宵山の中心部にはあまりないのだ。中心部は人通りが多いから、どうしても「儲け」を考えることになるのだろう。
のんきなやつは、少し寂れたあたりにある。「六角通」は、ぼくが勧めるエリアの一つだ。
そしてその六角通には、ぼくが「最強」と思う出店がある。
新町通六角をちょっと東に入ったあたりだ。
この出店をやっているのは、「お店」ですらない。
ただの一般人である。
たまたまこの、宵山のエリアとなる場所に、「住んでいる」のだそうだ。せっかく宵山なのだから、自分たちも何かやろうと仲間が集まり、十数年前からこの出店を始めたという。
ちょうど「文化祭」のノリで、儲けより、自分たちが楽しむことが目的となっている。酒を売る合間に自分が飲むから、皆すでにヘベレケだ。
ぼくはおととし、この出店を発見した。それからは、宵山では毎年必ずここに立ち寄る。
きのうもここで飲んでいたら、そこにギャル2名が通りがかった。出店の男性は、絶妙なタイミングで声をかけ、ギャルはこちらに寄ってくる。
そうなれば、こちらも「おごるよ!」となるだろう。
楽しい時間になるのである。
この出店は、やっているのが素人とはいえ、他の出店にはない特徴がある。酒を出す出店の多くがビールか、気の利いたところであってもサングリア止まりであるのに対し、カクテルを出すのである。
「一番のおすすめ」だというのは、フローズン ストロベリー マルガリータ。
男性がアメリカにいたとき覚えたものとのことで、ミキサーを使って凝った作り方をする。
ぼくはここで、ウォッカに75度のラム酒のストレート、それにこのマルガリータをさらに飲み、一気にヘベレケと相成った。出店の人たちに別れを告げ、家路につく。
途中で、さらにビールを一杯。
千鳥足で歩くから、後ろからタクシーに「プッ」とクラクションを鳴らされるのを、「なんでやねん!」とわめくほど、絵に描いたような酔っぱらいだった。
家に帰り、水をガブ飲みして布団に入った。
宵山は、今年もそこそこ満喫した。
「毎日毎日よく飲むね。」
ほんとにな。
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