豆苗と豚肉の吸い物の作り方。ポイントはニンニクを入れることで、一見合わなそうなニンニクとカツオだしはとてもよく合い、1万532回は死ねるものになる。
なぜ豆苗を使ったのかといえば、スーパーで目についたから。
そろそろ青菜が恋しくなってくる季節になってきたわけだが、ほうれん草も水菜・小松菜もまだ高い。
豆苗は、ほかの青菜が300円くらいするところ、1袋にたっぷり入ってたった100円。もやしのえんどう豆版みたいなもので、工場で作るから価格が安定しているのだろう。
しかも栄養は豊富のようで、豆苗の袋には、βカロチンはチンゲン菜の1.5倍、ビタミンEは小松菜の1.8倍、食物繊維はじゃがいもの1.7倍と書いてある。
おまけに全部食べ終わっても、残った根元を水に浸しておくとまた生えてきて、それも食べられるそうだから何ともオトクだ。
使い方は、袋に「お鍋に。サラダ、炒め物にも」と書いてある。水菜とおなじように使えばいいのだろう。
となれば、豚肉と合わせて吸い物だ。
青菜を吸い物の身にするというのは、関東の人はなかなか思い付かないと思う。京都では「菜っぱ汁」と呼ばれる家庭料理があり、青菜の吸い物はとてもポピュラー。
僕も6年前に京都に来てから菜っぱ汁をはじめて知り、あまりのおいしさにしょっちゅう食べるようになった。
カツオのだしに薄口しょうゆとちょっとのみりんで味をつけ、具はあとは油あげを入れるのがマスト。さらにしめじを入れてもよく、ユズの皮を浮かべたりすると料亭の味になる。
それから肉の吸い物「肉吸い」も、関西ではとてもポピュラー。大阪のうどん屋である吉本の芸人が、「肉うどんのうどん抜き」を注文するようになり、それが広まったのだそうだ。
関西だから、「肉」といえば牛肉なのだが、豚や鶏でも問題ない。一見合わなそうに見えるうす味のカツオだしと肉なのだが、これがまたよく合って、僕はこちらも、これまで100万28回は作っている。
だから上の菜っぱ汁と肉吸いを合体させると「青菜と肉の吸い物」となるわけで、これは関西ではふつうに食べるものだと思う。
しかしそこに、さらにニンニクを入れると、1万532回は死ねるものになるのである。
青菜と肉の吸い物にニンニクを入れるのは、大阪にあるなじみの居酒屋の、在日の大将が教えてくれたもの。「カツオだしにニンニク」が、まさに「在日の味」なのだそうだ。
和食の中心的存在であるカツオだしと、強烈な風味を持つニンニクとは、水と油、まったく合わないような気がするけれど、これがたまらなくよく合うのだ。
もしウソだと思うなら、実際に作ってみるべきだ。
ただし一つだけコツがあり、一味唐辛子をたっぷりめにかけること。ニンニクは独特の甘みがあるから、それを中和しないといけないのだ。
肉系の吸い物に合うのはもちろん、このだしに牡蠣を入れたりすると、3000万54回くらいは死ねる。
作り方は、難しいことは何もない。カツオ節をケチらないのがコツだ。
作り方
鍋に水・カップ2+2分の1と、軽くつぶして薄皮をむいたニンニク・1かけを入れ、中火にかける。
煮立ってきたら、カツオ節・1つかみ(10グラム。ミニパック4袋分)を鍋にすえたザルに入れ、弱火で2~3分煮出す。
ザルを上げ、絞らずに汁気を切れば、これで2カップのだしが取れる。
- 酒 大さじ1
- みりん 小さじ2
- 薄口しょうゆ 大さじ2
で味をつけ、まず、
- 油あげ 2分の1枚 (細く刻む)
- 豚バラウす切り肉 50グラム程度 (食べやすい大きさに切る)
を、弱火で5分くらい煮る。
火はほとんど沸騰しないくらいにするのが、肉を硬くしないコツだ。
中火にし、根元の上で切った豆苗・2分の1和を入れる。
豆苗はシャキシャキ感を残すため、煮すぎないのがポイントで、ほんとに20~30秒、ふつふつと再沸騰してきたくらいで火を止めて、器によそってたっぷりめの一味をふる。
これが、マジでうまいのだ。
肉吸いには卵かけご飯を合わせるのが定番だが、これはニンニクが入っているから卵は不要、白メシにした方がいい。
そしてこれが、酒のアテに最高になるにもかかわらず、今朝も「朝だから」というだけの理由で、酒を飲まなかったのだ。
こんなことをしてたら、僕はそのうち石を投げられて殺されるのではないかと思う。
「殺されないよ」
そうだよな。