自炊をするには、食材の買い物とその保存が絶対についてまわる。これをどのようにするかで、自炊のモチベーションは大きく左右される。
自炊は何より、「効率ではなく、楽しみが増す」ことを、あらゆる点で考えることが重要。自分のためだけに料理をすることは「仕事」としては成立し得ず、「趣味」として成り立つように考えないと、モチベーションを維持することはむずかしい。
よく自炊初心者向けの記事などで、「食材はまとめて購入し、それを冷凍保存しておく」ことが推奨される。でもそれは、一見効率的に見えても、特に初心者にとっては自炊の楽しみを減らし、モチベーションを低下させることにしかならないのではないかと思う。
食材をまとめて購入することがモチベーションを低下させる理由
理由1 食材を余してしまいやすい
たとえば1週間分の食材をまとめて購入するとしたら、1週間分の献立を大まかにでも考えておかないといけない。ところがこれが、初心者には難しいはず。
初心者は、1回分の献立を考えるのにも、レシピを見たりなどしてかなりの時間がかかるはずだ。1週間分の献立を考えるなど、あり得ないことだと思う。
献立を考えずに1週間分の食材を買ってしまえば、1週間後に大量の使い切れなかった食材を発生させてしまうことになるのは必然。
これは自炊をする上で、非常に大きなストレスになる。
理由2 その時々で食べたいものを食べられない
自炊の最大の楽しみは、その時に自分が食べたいものを思い浮かべ、その通りのものを自分なりに作ってみることだと思う。客観的に上手か下手かは関係なく、自分が思った通りのものを作り上げることができれば、それを食べることで大変大きな満足感を得ることができる。
ところで1週間分の食材を購入するということは、1週間後に自分が食べたいものを予測しなければいけないことになる。
これは自炊に慣れてくれば、あり合わせの食材から自分が食べたいと思えるものをひねり出すこともできるようになるのだけれど、初心者にはそれはまだ難しい。
すると冷蔵庫に残った食材を使い、自分が食べたくもないものを作らなければいけなくなる。これは非常にツライことだ。
食材は極力「1食分」を買うようにしよう
なので僕は、初心者には、まとめ買いは絶対にすすめない。そうではなく、買い物にこまめに行き、1食分の食材だけを買うようにすることがおすすめだ。
そうすると、たしかに効率は悪くて余分な時間がかかることにはなる。でもその方が、自炊の楽しさを増し、モチベーションを維持するためには都合がいいのだ。
それにスーパーなどの食材店は、こまめに通うとけっこう楽しい。新たな魚や野菜などとの出会いがあるし、だんだん勝手が分かってくるから、その時々で安いものを選べるようにもなる。
1食分の食材を買うためには、次のようなことに気をつける必要があると思う。
できる限り量の少ないものを選ぼう
スーパーで売られている包装は、1人分には多すぎるものが多い。なので極力、量が少ないものを選ぶようにするのがいいのはもちろんだ。
「使い切りパック」みたいな、少量をパックしたものが売られている場合もあり、ならばそれを選べばいい。
またキャベツや白菜などなら、4分の1にしたものを選ぶのは最低限必要で、それでも多すぎると思ったら、「キャベツや白菜は買わない」と決めてしまうのもいいくらいだと僕は思う。
ただここで課題は、量が多いものほど単価が安くなる場合が多いこと。
使い切りパックはどうしても高めだし、セールなどで大量に入った肉のパックが安く出ているなどのこともあると思う。
一人暮らしの自炊者は、そういうものに惑わされないことが重要。食材の値段など多少高くなったとしても、外食することに比べれば安いのだ。
ストイックに、量が少ないものを選ぼう。僕などは自炊を始めたての頃、青ねぎを、八百屋で普通1束で売っているものを1本ずつ、バラで売ってもらっていたこともある。
使う食材の数はできるだけ絞ろう
1食分でできる限り余らない食材を買うためには、作る料理自体を工夫することも必要だ。
よく料理のレシピには、たとえば肉と野菜を炒めたのなら、豚肉と小松菜、それに長ねぎ、シメジ、それに卵などが使われていたりすると思う。(僕もそのくらいのレシピはよく掲載する)
でも初心者は、使う食材の数を思い切って絞ってしまうこともおすすめ。使う食材の数が減れば、その分、余る食材も減るからだ。
上の例なら、「豚肉と小松菜だけ」でも十分おいしいし、卵はわりと日持ちするから、それに卵というのもいい。
8つの食材を使う「八宝菜」など、初心者には最悪だから、絶対に作らないようにするのは鉄則だ。
保存法の基本
とはいえ、食材をまったく余さないことは難しい。なので余った食材を、少しでも日持ちするように保存するのは重要だ。
保存法の基本は、次のようになると思う。
生の肉や魚は極力冷凍しない
まず生の肉や魚は、極力冷凍しないようにするのがおすすめ。冷蔵庫でも2~3日は持つのだから、そのあいだに何とか食べ切ることを考える。
生モノを冷凍すると、鮮度はやはり大幅に落ち、おいしくなくなる。また解凍するのにどうしても手間がかかるから、使うのが面倒にもなる。
そうすると、冷凍庫に使い切れなかった生モノが大量にあふれることになるのだ。
ただし、
- ウインナーやスパムなどの加工肉
- ちくわやさつま揚げなど魚の練り物
- 油あげ
については、冷凍にとても向いている。味もそれほど落ちないし、解凍も、お湯をサッとかければすぐできる(塩分が含まれているから溶けやすい)。
味出しなどで料理にちょっと加えるのにも向いているから、1回で使う分ずつ小分けにし、冷凍庫に常備するのはおすすめだ。
野菜は密封しない
野菜も、イモ類と玉ねぎに関しては常温で保存するのがいいけれど、あとのものは冷蔵庫に入れることになる。野菜を保存する場合の鉄則は、「密封しない」ことなのだ。
野菜はもちろん、乾燥させてしまうのは良くない。なのでビニールの袋に入れる必要はある。
でももう一つ、野菜が悪くなる原因は、「湿気」なのだ。ビニール袋の中に湿気がこもると、それが原因で細菌が繁殖する。
なので野菜は、ビニールの袋に入れて、口は密封せずに開けておくのが絶対の基本。密封するのに比べると、倍ぐらいは長く持つようになるはずだ。
ビニール袋で特におすすめなのは、お店で売っている時に入っている、セロファン的なやつ。あれは余分な湿気を吸う機能もあるものだから、下手に別の袋に入れ替えず、そのまま使ったほうが持ちはいい。