醤油味には無限の世界があるのである。(ハマチ煮付け)

2014/04/25

醤油味には、無限の世界があるのである。

ハマチの煮付け

「煮付け」は、この無限の世界を最大限に活用した料理法なのだ。


 
「醤油」といえば、「こいくち醤油」と「うすくち醤油」があることくらいは知っているが、味はその2種類だけだと思っている人は多いと思う。

しかし実は、「醤油味」には無限の世界があるのである。

 

こいくち醤油とうすくち醤油の味のちがいは、まあ「ほとんどない」とも言えるのであり、風味のちがいは多少はあるが、基本は「色のちがい」である。

野菜などを色よく仕上げるためにうすくち醤油を使うので、京都でも、うすくち醤油は使わずに、こいくち醤油を少し使い、あとは塩で補う、というやり方をする人もいる。

それよりも、醤油の味のちがいは「甘み」によって生み出される。

砂糖やみりんなどの甘みをどの程度加えるかにより、醤油味は無限の広がりをもつのである。

 

甘みをまったく加えないと、「吸物」の味になる。

吸物は、醤油と塩だけで味付けする。

それから甘みを少しだけ加えると、「うす味」になる。

これはうどんだとか、おでんだとかの出汁の味だ。

さらに甘みを加えていくと、「こってり味」になる。

これが魚の煮付けなどの味になる。

 

これらはいずれも、同じ醤油を使った味だが、それぞれで異なった役割を果たしている。

だしの風味を味わうには、吸物味が適当だし、野菜を煮炊きするにはうす味がいい。

さらに魚や肉を煮るのには、こってりした味がいい。

同じ醤油が、甘みの加減一つによって、ちがった材料に合うようになるのである。

 

これが西洋の場合なら、全くちがうソースを使うことになるのではないだろうか。

詳しいことは知らないから、多少見当はずれかもしれないが、スープはポタージュで、野菜はトマト、肉はドミグラスなど・・・。

いずれにせよ、西洋では材料によって、ちがったソースを使い分けるはずである。

それにたいして日本の醤油はそれだけで、甘みを変えることにより、どんな材料にも合わせられるということなのだ。

 

醤油は中国で発明されたと思うけれど、中国は、味つけをするのに西洋に近い考え方をするのではないだろうか。

中国では、料理には甘みをあまり入れないから、日本のような醤油の使い方はしないはずである。

その分中国には、豆板醤だの甜麺醤だの、「醤」が様々な種類あり、これを料理によって使い分ける。

日本のこの醤油の使い方は、日本人により、発明されたのではないかと思うのだ。

 

さてこの醤油味の変化について、2つの意味での「無限」がある。

まず第一に、甘みの量は、いくらでも少しずつ、変えることができるということだ。

だから醤油の味は、「吸物」「うす味」「こってり味」の3つだけがあるのではなく、その中間に、無限の数、いくらでもちがった味があることになる。

さじ加減一つで、味が変化していくわけである。

 

さらに甘みは理論上、無限に入れることができる。

甘みと醤油の組み合わせは不思議なもので、甘みをたくさん入れると、その分醤油をたくさん入れれば、「甘くなる」のではなく、「よりこってり」していくのだ。

水に溶かせる砂糖の量には、自ずと限界があるけれど、さらにこれを「煮詰める」という方法がある。

煮詰めて水分を減らすことで、こってり度はいくらでも増すことができるのである。

 

このように日本の料理は、醤油と甘みによるこの2つの無限により、あらゆる材料に対応できるようになっている。

このことは何となく、「墨絵」と似ている感じがしてきはしないだろうか。

墨絵は墨の濃淡で、すべての色を表現する。

醤油の味の濃淡で、すべての料理を作ることと、根本の精神は同じであるように思うのである。

 

そして「煮付け」は、この醤油による味つけの妙を、最大限に活かした料理法だといえる。

煮付けは汁を飛ばしながら煮詰めていくことになるから、そのあいだにこってり度の中間地点を、次々と通過してくことになる。

どの程度煮詰めるかで、こってり度はいくらでも変わっていく。

ここに煮付けの、難しさとともに、面白さがあると思うのである。

 

◎スポンサーリンク

 

というわけで、昨日は魚屋へ行ったら、ハマチの切り身がなんと100円で売っていたから、これを煮付けにすることにした。

ハマチ煮付けの作り方(1)

ちなみにハマチは今が旬で、これからだんだん大きくなって、年末頃にはブリになると、魚屋の女将さんは言っていた。

切り身を煮付ける場合には、かならず皮に切込みを入れておくようにする。

これは味をしみさせるためと、皮が縮んで身が反ってしまわないようにするためである。

 

鍋にだし昆布を敷き、魚を入れる。

ハマチ煮付けの作り方(2)

煮付けの時は、ゴボウや里芋をいっしょに炊き込むと、またうまい。

酒を1/2カップと水1カップ、砂糖とみりん、醤油をそれぞれ大さじ3。

強火にかけて、アクが出てきたらていねいに取り、味を見て、砂糖か醤油を加減する。

 

ここから煮詰めていくことになるが、大事なのは火加減である。

ハマチ煮付けの作り方(3)

魚の煮時間は、基本は10分。

それ以上煮るとパサパサになってしまう。

だから煮詰め加減は時間でなく、火加減によって調整する。

落としブタをして、煮汁がきちんと上まで回る、中火程度の火加減は維持しないといけないけれど、火をそれより強くすれば、たくさん煮詰まってこってりし、弱めにすれば、あまり煮詰まらずにあっさりすることになる。

この火加減に、煮付けのツボがあるのである。

 

10分経ったら魚をとり出し、煮汁を少し水でうすめてそうめんを煮る。

ハマチ煮付けの作り方(4)

そうめんは、ゆでたのを煮汁で温めるようにしてもいいが、こうして乾麺を直接煮てしまってもいい。

ちなみにこれは、ぼくが勝手にやっているのではない。

京都の料亭で仕事をしていた人から、料亭ではこうやることもあると聞いたものだから、心配は不要である。

 

皿に盛り、好みで青ねぎや七味をふる。

ハマチの煮付け

魚の煮付けは、本当にほっくりする。

 

ねっちりと煮えたそうめんが、またいいのである。

ハマチの煮付け

 
 

あとは水菜の吸物。

水菜の吸物

とうとう八百屋に水菜がならぶ季節となった。

水菜といえば、まずはこれが、一番うまい。

一番だしに酒とうすくち醤油、それに塩で吸物の味をつけ、油揚げと水菜をサッと煮る。

本当は柚子の皮を散らすとうまいが、昨日は一味をちょっぴり振った。

 

厚揚げの焼いたの。

厚揚げの焼いたの

フライパンでこんがり焼き、おろしショウガと青ねぎ、それにポン酢醤油をかけて食べた。

これは何度食べても、全く飽きないのである。

 

キュウリのポン酢醤油。

キュウリのポン酢醤油

スリコギで叩いてちぎったキュウリを、ポン酢醤油に30分ほど浸しておき、一味をふって食べる。

これは昨日はじめてやったが、けっこううまかった。

手間はかかるが塩もみしてからポン酢に浸せば、もっとうまいのではないかと思う。

 

酒は日本酒。

日本酒

昨日は料理をするあいだに焼酎水割りを4杯も飲んでしまったから、日本酒は2合にしておいた。

 

「煮付けはいかにも日本人って感じがするね。」

チェブラーシカのチェブ夫

オレもほんとにそう思うんだ。

 

◎スポンサーリンク

 

◎参考書籍

土井善晴の定番料理はこの1冊
土井善晴の定番料理はこの1冊
1,365円(アマゾン)

 

◎関連記事

魚を煮れるようになると、料理の世界が大きく広がるのである。

煮付けは日本が誇る、類まれなる魚の料理法なのである。

-029 その他魚料理