京都大宮「セアブラノ神」で背脂煮干しそばを食べた。
背脂醤油の元祖「ますたに」のラーメンを、その本質においては忠実に継承し、うまく進化・発展させていると感じ、「なかなかなものだ」と思ったのである。
京都がラーメンがとてもうまい場所だというのは、府外の人にはあまり知られていないと思う。「京風ラーメン」というのは、全国いたるところにあると思うが、あれは京都のラーメンとは関係なく、誰かが勝手に、京都をイメージして作ったものだ。
京都発のラーメンで多分一番有名なのは「天下一品」で、これが京都発だというのは意外に思う人も多いだろう。西日本を中心としてチェーン展開している「來來亭」も、本部は滋賀にあるらしいが、味は京都のラーメンだ。
さらに真っ黒いスープの「新福菜館」、プレーンな豚骨醤油の「第一旭」と、京都のラーメンは主要なものだけで4系列があり、他にも新しい店もたくさんあるから、その土地オリジナルの味がこれだけ幅広くある場所は、他にはそうはないのではないだろうか。
來來亭のラーメンは、元は白川にある「ますたに」という、終戦後すぐに創業された店が開発したもので、「背脂醤油系」と呼ばれて多くの派生店がある。豚骨ベースの醤油味のスープにたっぷりの背脂が入れられ、背脂のクドさを和らげるのに唐辛子が使われるのが特徴で、あとはその店その店の工夫となる。
ますたにのラーメンは、ここに、何だかわからないのだが、味噌のような、香ばしい味がするものが入れられていて、これがスープにしっかりとしたコクをつけている。逆に來來亭のように、スープをアッサリとさせている店もあるし、唐辛子を大量に入れる店もある。
ますたには、まさに「名人」と呼びたくなる店なのだが、チェーン展開やのれん分けなどに興味がなかったのだろう、そこで修行した人がそれぞれ独立に店をやり、その店からまた新しい店が出てとしながら、味がさらに幅広く進化しているわけである。
大宮にも背脂醤油系の店はいくつもあるが、まだ行ったことがない、わりと最近出来た店が評判がよかったので、きょうブログ更新が終わってから出かけてきた。「セアブラノ神」との名前で、元は焼肉屋が昼だけラーメンを提供していたのが、ラーメン専業になったらしい。
場所は壬生川通高辻を東に入った北側。マンションの1階にある。
着いたのは1時半だったが、人気店なのだろう、前に4人が並んでいた。
店内はモダンな調度で、たしかにラーメン屋というよりも、焼肉屋の風情である。カウンターに、椅子が余裕をもって配置されているのがいい。
まずはサイドメニューの唐揚げで、ビールを一杯。ラーメンは、後から出してもらうことにした。
唐揚げは、味は普通なのだが、揚げたてが出てくるのが気が利いている。
「麺のゆで時間に6分かかるから」と聞いていたので、ビールを飲み終わる前にラーメンを注文。計算通り、ちょうど飲み終わったころに出てきた。
背脂煮干しそば。
1センチ近くの厚さがあろうかという大判のチャーシューに、メンマとねぎ、さらに荒くみじん切りされた玉ねぎがトッピングされている。背脂は、スープの一面を覆うかなりの量だ。
スープを一口飲み、
「うーん、なるほど、これはうまい・・・」
思わず声が出た。
背脂醤油に「煮干し」というのが、まず意外なわけだが、これが強めに効かされたニンニクと相まって、とてもよく合う。
さらにこのラーメン、もう一ひねりされていて、たぶんナンプラーか何か、エスニックな味がするものが入っている。それが玉ねぎともうまいこと呼応しながら、いい感じのアクセントをつけている。
ますたにのラーメンを、その本質においては忠実に継承し、うまく進化・発展させていると感じ、「なかなかなものだ」と思った。
麺は、極太麺。
スープがかなりコッテリとしているから、たしかに麺は、太いのがいい。やや硬めの、しっかりとした歯応えだ。
最後まで飽きることなく食べ終わり、とても満足した。
背脂やチャーシューの量を考えれば、これで700円は高くない。