ほんとうは、杏花楼・百合ケ丘本店でラーメンとチャーハンのセットを食べようと思っていた。しかし郵便局での手続きが長びいて、到着するとお昼の営業時間が終わっていた。
そこで改めてネットを検索して行ったのが、新百合ヶ丘からほど近い場所にあるラーメン店「小川軒 平尾店」。
看板メニューである塩ラーメンを食べてみると、これが大変うまかった。
お店は廃業したガソリンスタンドの跡地に作られている。
カレー屋・洋食屋が併設された、ちょっとしたフードコート仕立てになっていて、10台以上がはいる駐車場が備えられ、駅からは離れているが、車だと行きやすい。
建物は昭和風。
店内には昭和歌謡が流れている。
「本日の日替わり」とされている「らーめん屋さんのカレー丼+らーめん」990円をたのんでみた。
「ラーメンは醤油と塩どちらにしますか?」と聞かれたから、「この店ではどちらが普通なんですか」と聞くと、「塩です」とのことで、それを注文。
この店は看板に「塩らーめん」と大書きしていて、塩ラーメンはまさに看板メニューなのである。
塩ラーメンはすぐに出てきた。
どんぶりは赤と白の、いわゆる昔ながらの中華どんぶり。なるともトッピングされていて、この店はただ店舗やBGMが昭和風であるばかりでなく、ラーメン自体も昭和風をイメージしていることが見た目でわかる。
スープをすすって、「おー、ウマイ……」と、ちょっと唸った。
僕はラーメンは基本的に醤油派で、九州とんこつラーメンは別として、塩や味噌・担々麺はあまり食べない。だから他店の塩ラーメンとイマイチ比較ができないわけだが、これまでに何度か食べた有名店の塩ラーメンは、コッテリしたものが多かったと記憶している。
スープが超濃厚だったり、脂やニンニクが多めに使われていたりしていて、「塩ラーメンはあっさりとしているかと思ったらそうではなかった」という意外性が一つのウリなのだろう。
ところがこの店は昭和風のイメージだから、奇はてらっていない。
「サッポロ一番塩らーめん」的な王道の、基本サッパリしているけれど、きちんとコクもあるという塩ラーメンになっている。
しかし奇をてらわないということは、裏を返せば「特徴がない」ということでもある。
サッポロ一番塩らーめんとおなじなら、「だったら家でサッポロ一番塩らーめんを食べればいい」ということになるわけで、お客を呼び込む魅力をどこに持ってくるかが課題になる。
それが、この小川軒の場合には、
「サッポロ一番塩らーめんとおなじ系統の味ながら、サッポロ一番塩らーめんより圧倒的にウマイ」
ことを目指していると思えるのである。
まずはスープが、非常にうまい。
これはお店のウリともされていて、鶏ガラのほかにゲンコツや昆布・ホタテ貝柱・にぼし・さば節などが使われて、手の込んだものであるようだ。
しかもこれらの色々な材料がどれひとつとして突出することはなく、それぞれがお行儀よく協調しながら、全体としてまろやかでコクのある「おいしい味」を作っている。
たいへん上品な味だといえ、一気飲みしたくなるほどだった。
加えてスープの味つけも奮っている。
サッポロ一番塩らーめんと同様にゴマとねぎが入れられているのだが、さらにユズが入っていた。
しかもそのユズがどんぶりの下に沈むように入れられて、食べ進んで最後にどんぶりの底をさらうと出てくるという小憎い演出までされていて、僕はユズを発見し、「このラーメンには完全にやられた」と思った次第。
麺はツルツルでしかもしこしこ、さらにやや柔らかめになっているのが何とも上品。
チャーシューも柔らかすぎず硬すぎずの程よい感じ。
トッピングで特筆すべきはメンマで、これが細い孟宗竹をやわらかく煮た自家製で、口の中でとろけるよう。
このラーメン、隅から隅まで細やかに気が配られた、極上のラーメンと太鼓判が押せると思う。
それからラーメン屋さんのカレー丼。
味つけはいわゆる「家庭の味」で、レトルトのカレーなどでもおなじみのタイプなのだが、もちろん「らーめん屋さんの」と言うくらいだから、ラーメンのスープが使われているのだろう。しっかりとしたコクがある。
奇はてらわないが、内実を充実させるという意味で、この店のラーメンと考え方はおなじで大変うまい。
この店は場所的にちょっと辺鄙で、公共交通機関では行きにくいのが欠点なのだが、駐車場は広いから、車では行きやすい。
すこし遠くに住んでいる人でも、わざわざ行ってみる価値は十分あると僕は思う。
小川軒 平尾店
- 住所 東京都稲城市平尾2-7-1
- 電話 042-331-2550
- 営業時間 11:00 ~ 23:00(L.O 22:30)
- 定休日 年中無休