名護市にある「宮里そば」に出かけていった。何しろはじめて沖縄へ来たとき、那覇空港で飛行機のタラップを降りたところに立っていた空港職員の美人の女性に、「沖縄そばはどこがおいしいですか」と聞いたら、「名護市では宮里そばです」と即答したのだ。
宮里そばは沖縄そばの老舗中の老舗店、沖縄県民で宮里そばを知らない人はいないというくらいだそうだ。
名護市へ来たら、やはり宮里そばの沖縄そばは、食べないわけにはいかないのだ。
はじめに食券を買うシステムになっている。
知り合いに、「そばの小とカレーを頼むのがいい」と聞いていた。宮里そばは、カレーもうまいのだそうだ。
でもその知り合いは女性だったけれど、僕は男、そばも普通サイズの、三枚肉そばを頼むことにした。
テーブルに座ると、そばに入れる調味料として紅しょうがと一味・七味・コーレーグースー(唐辛子の泡盛漬け)が置いてある。
でもこれは、これまで沖縄そばを何回か食べた経験上、辛いのをあまり入れるとせっかくの沖縄そばのだしの風味が消えるから、紅ショウガくらいにしておいた方がいいというのが僕の意見。
さっそく三枚肉そばが届いた。
これはスゴイ……。
スゴイのは、まずその量。でかい三枚肉がドカドカと乗っている。そして麺も、下の方にたっぷりあり、大盛りラーメンくらいの量は余裕である。
味は、まずはこのだし。かつお節の風味がぷんと立ち、そこに昆布と、さらに肉の風味が加わっている。
沖縄そばのだしには色々と種類があり、かつおだしにしょうゆでうすく味をつけた、関西風のうどんだしと全くおなじようなものもある。でも名護で、やはり沖縄そばを出す「マリン亭」の女将に聞いたら、まず丸ごとの鶏肉を2時間ほど煮て、次に豚肉を煮て、そこに昆布とかつお節を加えるのだとのことだった。
味つけは、しょうゆは全く使わず、塩だけでするとのこと。
ここ宮里そばのだしも、マリン亭とほぼおなじ。たぶん「名護そば」と呼ばれる同一の流派なのだろう。
でも麺は、マリン亭がきしめんのような平たいやつであるのにたいし、こちらはうどんほどの太さで、ちょっとちがう。しかしいずれも、らーめんのような強いコシがあって、大変うまい。
そしてそばを食べている最中に、カレーが到着。
これも、ものすごい……。
400円だからと思って、舐めていたのだ。そうしたら大きなカレー皿になみなみと盛られていて、肉やじゃがいも・ニンジン・玉ねぎの具もたっぷり。
ご飯も、カレーの下にたっぷりある。さすがにそばのふつう盛りを食べたあとでは食べ切れず、ご飯はすこし残してしまった。
そしてこのカレー、大変に味わい深い。スタイルとしては「昔のカレー」で、だしにカレー粉と塩で味をつけ、小麦粉でトロミをつけたもの。
そのだしが、たぶん沖縄そばのだしを使っているのである。なので今どきの刺激がある味が好きな人には物足りなく思えるかもしれないが、控えめでありながら、しっかりとしたコクがある。
おそらく店主は、沖縄そばのおいしいだしがあるわけだから、それを使って何かほかにメニューが作れないかと考えたのだろう。そんな創意工夫が、とても微笑ましく感じられる。
そうなってくると、メニューにある「スパゲティー」に興味がわく。
これもカレーと同様、沖縄そばのだしを使ったものなのだろうか。さらに「トースト付」というのも興味深い。
今回はもう腹が一杯で食べられなかったけれど、今度ぜひ試してみようと思っています。