沖縄での2週間の滞在から帰ってきた。もっとも食べてみたかった沖縄そばは、1億3877回死ねるほどうまかった。
沖縄そばは、これまで一度も食べたことがなく、どんなものだか全くわからなかった。初めて食べたのは、那覇空港にある「空港食堂」。
4階にレストラン街がある国内線ターミナルの1階の端、非常に目立たないところにあるが、食べログによると評判はいいらしい。入口で食券を買って好きな席に座っていると、店員ができ上がった料理を運んでくれるシステムだ。
食べたのは、豚のスペアリブが乗っている「ソーキそば」。
これが、大変うまかった。
まず驚いたのは、汁をすするとカツオだしの香りがプンとすること。豚のスープにカツオ節と昆布を加え、塩と少々の醤油で味つけするのが沖縄そばの基本だそうだ。
麺は太めの平打ち麺。和風だしだからうどんと似ているかと思ったら、こちらはかん水が使われた、いわゆる中華麺だった。
ウィキペディアによれば、沖縄そばは明治の後期、那覇で中国人が開いた支那そば屋がルーツだそうだ。当時は普通のラーメンと変わらないものであったらしい。
それが大正から昭和にかけて一般に普及して、沖縄戦で一時は消滅したものの、戦後に復活、さまざまな工夫が凝らされながら、現在のようなダシは和風で大ぶりの肉が乗せられたものになったのだとか。
本土のラーメンも、30年くらい前から和風ダシが使われるようになり、現在では豚骨ダシと和風ダシの「ダブルスープ」が全盛だ。
沖縄そばは、本土のラーメンの影響はまったく受けなかったとのことなのだが、本土のラーメンの変化を先んじたとも言えそうだ。
さらに沖縄そばは、紅しょうがが乗せられて、味変えにはコショウではなく、七味とコーレーグース(唐辛子の泡盛漬け)が使われる。
激辛で泡盛の味がするコーレーグースを加えると、ラーメンとはまったく違う別物になるのだが、やはりまずはこれを入れずに、そのままの味を味わうのがおすすめだ。
沖縄そばは、あと2回食べた。2回めは、名護市屋我地島にある「マリン亭」のソーキそば。
マリン亭のお母さんは、料理がうまい。しかもいかにも家庭料理という感じのうす味なのが特徴だ。ソーキそばのダシも、たぶん醤油を使わず塩味だけだと思うのだが、しっかりとしたコクがある。
仲間が、「他の店よりここのソーキそばが全然おいしいです」とほめた。するとお母さん、
「ダシが違いますから」
と、自慢気に答えていた。
また名護市あたりの沖縄そばは、麺がきしめんのように太いのが特徴だそうなのだが、これもきちんとかん水が使われた中華麺だ。
あともう1回は、辺野古からほど近いところにある食堂「南乃畑」で食べたもの。
ソーキではなく、三枚肉が乗せられたものを注文した。
これはマリン亭とは対極で、豚のスープはかなりコッテリ煮出されていて、さらに煮干しが加えられ、ちょうど本土の「煮干しラーメン」の味に近い。これをおかずに、ごはんがいくらでも進むやつだ。
麺は、稲庭うどんとちょうど同じくらいの太さ。
でもこれも、かん水が使われた、ややボソボソとした中華麺で、大変うまい。