向田邦子のことを好きになる本。【向田邦子の手料理】

2016/01/31

向田邦子の手料理

脚本家・向田邦子が遺したレシピを妹さんがまとめたもの。掲載された料理を作っていくうちに、きっと向田邦子が好きになる。

 

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向田邦子は言わずと知れた、「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」「あ、うん」などの脚本家。昭和4年の戦前生まれで、うちの親などとだいたい同じ世代だが、惜しくも51歳という若さで、飛行機事故で亡くなっている。

この向田邦子が「料理好き」で知られていて、終生独身で通したものの、忙しい仕事の合間をぬって、3食の食事はみずからの手で作っていた。新しいレシピを開発するのにも熱心で、仲間を家に呼んでは食事会を催して、開発した新料理を披露していたそうだ。

 

『向田邦子の手料理』は、向田邦子が遺したレシピを元にして、妹さんがまとめたもの。妹さんは最近まで、向田邦子も協力して立ち上げた料理屋「ままや」を赤坂でやっていた。

 

レシピ本を見ることは、単に料理を学ぶことにとどまらず、レシピ本の著者を深く知るための大きな手段にもなると思う。

掲載されたレシピを実際に作ってみて、さらにそれを食べてみることで、その人が物事をどのように発想するのかとか、仕事をどのような段取りでやるのか、どのような配慮をするのか、そしてもちろん、どのような味が好きなのかなど、その人の日常の生活が感じ取れるようになるからだ。

 

檀一雄の料理にしても、「無頼派」と呼ばれ、放浪や浮気をくり返した破天荒なイメージとは裏腹の、繊細な配慮に舌を巻くことが多い。

そういう意味で、『向田邦子の手料理』から感じ取れる人間像は、「おきゃん」と呼ぶのがまさにふさわしい、古風で可愛らしい女性。

食材にたいする好奇心が旺盛で、それもただ新しいものを求めるばかりでなく、ある食材を、ふつうに使われるやり方ではなく、別の使い方をすることで活かせないかを考えるのが好きだったのではないかと思える。

 

代表料理の一つとして「わかめ炒め」が上げられるのではないかと思う。

これはふつうなら、生で酢の物に入れるか、みそ汁に入れるくらいでしか使われないわかめを、ゴマ油と醤油で炒めるもの。

わかめに香ばしいコクがつき、驚くほどうまい。

それから「卵とレバーのウスターソース漬け」も有名だ。ふつうは料理にかけるか、隠し味としてくらいしか使われないウスターソースを漬け汁にするもので、これも「ウスターソースとは本来このためにあるのでは?」と思いたくなるほどの完成度。

 

忙しい合間をぬっての料理だから、作り方はどれもシンプル。調味料も凝ったものは使われていないので、ほとんどの人はレシピを見れば、すぐに作れるのではないかと思う。

掲載されている料理は、酒の肴やご飯のおかずに打って付けのものばかり。レシピ本としての実用性も、かなりのレベルだと思う。

 

ただし欠点を一つ上げれば、レシピがあまり詳しく書かれておらず、中には分量や時間が細かく指定されていないものもあるということ。

だから料理を全くしたことがない人にとっては、ちょっと難しく感じるかもしれないが、ちょっとでも経験がある人なら、おいしく作れるはずだと思う。

 

そしてこの本を見ながら色んな料理を作ってみると、きっとおきゃんな向田邦子が好きになる。

この『向田邦子の手料理』は、そんな心あたたまる出会いも経験できる一冊だ。

 

1,728円(税込)。
 

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