ようやく可決。【大阪市ヘイトスピーチ条例】

2016/01/17

大阪市役所

きのう大阪市議会で、「大阪市ヘイトスピーチ条例」が可決した。大阪市は、差別主義者にとっては住みにくい街になった。

 

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きのう、大阪市議会で「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」が賛成多数で可決した。

在日コリアンにたいする差別は昔からあり、関東大震災後は在日コリアンにたいする大虐殺も起こっている。戦後ももちろん差別はつづいているのだが、近年それが過激さと陰湿さを増したのは、インターネットの普及が大きく後押ししているそうだ。

 

2ちゃんねるなどで誰でもが、匿名で気軽にヘイトスピーチできるようになる。そこで培養され、街に出ていったのが、2006年に結成された「在特会」などのデモだとか。

一時は数百人が参加し、「朝鮮人を殺せ、日本からたたき出せ」と叫びながら街なかを練り歩いた。

 

これらヘイトスピーチは、2013年から有志の「カウンター」が抑止を担当、その成果によって、デモは現在では多くても「数十人」となってきてはいるものの、本来は「犯罪」としてきちんと処罰されなければならないものだ。

日本も加盟する「人種差別撤廃条約」は、

「ヘイトスピーチおよびそれを行う団体を非難し、それらを根絶するために迅速かつ積極的な措置をとることを約束する」

と明記している。またさらに詳しく、

「ヘイトスピーチを行うことを法律で処罰すべき犯罪であることを宣言する」

ともしている。

 

だから本来なら日本政府は、ヘイトスピーチを規制し、処罰する法律を制定すべき立場であるのに、それを1995年の条約加盟以来20年以上、

「言論の自由を萎縮させる危険を犯してまで法律を制定するほど、日本ではヘイトスピーチは行われていない」

として、国連人権委員会からの再三の催告があるにもかかわらず、法律の制定を留保している。

でも現在の状況は、もう「ヘイトスピーチは行われていない」とは言えないものだ。それでようやく、ヘイトスピーチ対策法についての審議が国会でも始まっている。

 

今回の大阪市のヘイトスピーチ条例は、大阪市内でもヘイトスピーチの被害が拡大している状況を鑑み、国の法律制定を待たずに、自治体としてできることを独自にやろうというものだ。

橋下前市長の時代におおさか維新から法案が提出され、審議がつづいてきた。

 

自治体の条例だから、ヘイトスピーチを「処罰する」というところまでは難しい。それでヘイトスピーチに対する方策は、

「申し出があれば拡散防止措置をとるとともに、ヘイトスピーチをした者の氏名を公表する」

としている。

原案にあった「ヘイトスピーチ被害者の訴訟費用を支援する」ことは取りやめになったものの、ヘイトスピーチがはっきりと「条例違反」と認定され、氏名まで公表されるわけだから、それなりの抑止効果はありそうだ。

 

条例の対象は、デモや街宣はもちろんのこと、それを記録した印刷物やDVDなどの配布、さらにはインターネット上での動画にも適用される。現在在特会が行っている活動は、大阪市で行われたもの、大阪市民にかんするものについては、ほぼ全て網がかけられることになる。

また申し出があった事案がたしかにヘイトスピーチに該当するかどうかについては、市長が学識経験者などから選任、議会が承認した「審査会」が審査をすることになっている。

 

ヘイトスピーチの「定義」についても、大阪の条例はしっかりしている。

よくヘイトスピーチをおこなう差別主義者が、カウンターが抗議の罵声を浴びせるのに対し、「それは日本人(自分たち)に対するヘイトスピーチだ」とナンセンスな抗弁をする。

自分たちもヘイトスピーチしているかも知れないが、カウンターも自分たちを罵倒して、ヘイトスピーチしているのだから、「同罪だ」と言いたいわけだ。

しかし大阪市の条例では、その言い逃れはできないようになっている。

 

ヘイトスピーチの定義として、まず「人種や民族にかかわる特定の属性」にたいするものであることがある。たとえば「在日コリアン」などがそれに当たる。

それからそれが、その人たちを侮蔑・誹謗中傷し、脅威を感じさせるものであるというのもあるし、それがただ個人間のケンカではなく、街角やインターネット上など不特定多数が見聞きしうる場所で行われるということもある。

さらにはその人たちの自由を制限し、憎悪や差別意識、暴力を煽ることが目的というのもある。

 

これらはもちろん、差別主義者の「ゴキブリ朝鮮人を殺せ、たたき出せ」は、すべて当てはまる。

でもそれと同時にこれだけだと、「差別主義者はクズだ、帰れ」というカウンターの差別主義者に対する抗議も、同じように当てはまってしまうことになりかねない。

 

ところが大阪市の条例には、さらにもう一つ、ヘイトスピーチについての定義が加わっている。それは、

「相手を社会から排除することを目的としている」

というものだ。

圧倒的多数である日本人にとっては、少数派である在日コリアンを日本社会から排除しようとすることは実現性があるけれど、逆に在日コリアンが日本人を社会から排除することなど、決してできるわけがない。

 

これをもって、差別主義者の「日本人に対するヘイトスピーチ」という妄言は、完全に封殺されることになるのである。

ネトウヨどもの落胆たるや相当なもののようで、少し前からネット上には、「条例が制定されたら、もう大阪には行けない、行きたくない」という声が続出していたのだそうだ。

 

 

さてこの大阪市ヘイトスピーチ条例は、この1週間ほどで政党間の調整が進み、きのう、自民党以外の賛成多数で可決される見込みとなった。

大阪市役所

日本で初の、ヘイトスピーチについての法律が成立する。その歴史的な瞬間に立ち会いたいと思い、おれも大阪市役所へ出かけていった。

可決されたらカウンターの仲間とハイタッチをし、そのあと祝杯でも上げたいと思っていた。

 

審議の開始時刻より少し前に議場の傍聴席につくと、すでにカウンターの顔見知りや仲間もたくさん来ていた。

カウンターの人たちは、これまでかなりの時間と労力をかけ、さらにはネトウヨから中傷されたり、警察から逮捕されるリスクにもさらされながらやってきている。まさに「待望」の法律だ。

 

しかしそれと同時に、在特会などの差別主義者も数名来ていた。街頭でよく顔を見るやつらもいる。

「自分たちの命運が尽きる瞬間を確認しに来たのだろう、、」

そのときは、そう思っていた。

 

審議が始まり、順調に進んでいった。これまでの審議の経過が報告され、自民党の代表が、法案に反対の意見を述べる。

ところが自民党も、「法案の趣旨には賛成」だそうだ。それならなぜ反対するのか、意見をよく聞いたけれども、よく分からなかった。

 

それからおおさか維新の会の代表が、賛成の意見を述べる。大阪市におけるヘイトスピーチの現状、法案の趣旨、修正箇所を説明し、いよいよ最後のシメの文句に入ったところで、、

 

男が一人、騒ぎ出した。おれも在特会などの街宣で、何度も顔を見たことがある差別主義者だ。

「日本人の人権を守れ!」

そしてオレンジ色のカラーボールを、賛成意見を述べている議員に投げつけた。

カラーボールは議員を直撃こそはしなかったものの、すぐ近くではじけ飛び、議員にも塗料が少しついたようだ。

 

それまで静かだった議場は、一転騒然。男はすぐに警備員や職員に取り押さえられ、連れだされた。

やがて到着した警察に、男は連行、逮捕されたとのことだ。ほかの差別主義者も連れだされ、帰宅させられたようだった。

 

「差別主義者が頭が悪いのは知ってはいたが、ここまでとは思わなかった、、」

おれは思った。

カラーボールを事前に用意していたわけだから、はじめからそれを投げ、審議を妨害するつもりだったのだろう。それにより、ヘイトスピーチ条例の成立を阻止できると思ったのか。

だとしたら、幼稚園生以下の思考力しか持ち合わせていないことになる。

 

しかしカウンターの先輩は、長年差別主義者と対峙しているだけあって、差別主義者の思考パターンは熟知しているようだった。きのうも「何かやるんじゃないか」と思い、警戒していたのだそうだ。

 

それから延々と議会は休憩。会期はきのうまでだったそうで、「ちゃんと審議は再開され、条例は可決されるのか」と気を揉みながら、別室で待機した。

ようやく夜の10時を過ぎて、審議が別室にて再開されるとの連絡が入った。

 

でもおれは、さすがにもうタイムリミット。京都まで帰らなければいけないし、酒もきちんと飲む必要がある。

後ろ髪を引かれながら、大阪市役所をあとにした。

 

帰りの電車に揺られているとき、ツイッターに一報が入った。

「やった!」

 

大阪ではカウンター以外にも、これまで長年にわたってヘイトスピーチに苦しめられ、またそれと戦ってきた人はたくさんいる。今回の条例の制定も、市長や議会だけでなく、多くの人が陰に陽に後押ししてきたとのこと。

まさに報われた思いがしているだろう。

 

京都について、ラーメン屋で一人で乾杯。

ハイタッチもできず、祝杯もみなと一緒には上げられなかったけど、条例が成立すれば、それでいいのだ。








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