鎌倉・室町時代に精進料理に夢中になりすぎたため、炒め物のイノベーションをキャッチアップすることができず、時代遅れになってしまった和食。ようやく戦後になって炒め物を取入れようとするものの、「にんにくの壁」があるためにうまく果たせず、日本の家庭料理は各国の料理が並存する混迷を極めた状態となっています。
今回は、炒め物を和食にアレンジするのが難しいのはにんにくを使わないからであること、および反和食の枠組みを用いることにより、世界の炒め物を一貫した作り方に落し込んでいけることを紹介します。
反和食の枠組みを頭の隅に置いておくことにより、
- 長年料理をしているのにレシピを見ないと作れない
- 使わない調味料の小瓶が棚に山積みになっている
などのことはなくなるかもしれませんYO!
炒め物を和食にアレンジしにくいのはにんにくを使わないから!
「炒め物」は、手軽に作ることができ、味わいの面でもメリットが大きいことから、「世界標準」の料理法となっています。和食は、クソださいことに、鎌倉・室町時代に精進料理に夢中になりすぎてしまったため、炒め物を導入しそこねてしまいました。
戦後になり、ようやく炒め物を導入する機運が高まってはきたものの、肉じゃがや豚生姜焼きなどごく一部の例外を除いては、炒め物を自らのものとすることに和食は成功していません。
成功していない理由は、和食がにんにくを使わないためです。
にんにくと油、およびスパイスをベースとする世界の料理は、にんにくなしで和食にアレンジすることが多くの場合にできません。また、にんにくなしでアレンジしても多くの場合、元の料理より大幅にまずくなるため、アレンジをする意義がそもそもありません。
世界の料理を自分たちのやり方にアレンジすることができないため、日本の家庭料理は、あるときは和食、あるときは中国・韓国料理、あるあるときは西洋料理と、複数の異なった系統の料理法や調味料が並存する、混迷を極めた状態になっています。
それにより、レシピを見ないといつまでたっても料理が作れるようにならなかったり、使わない調味料の小瓶が棚に山積みになったりなどの状況が生まれています。
この混迷した家庭料理の状態は、にんにくを使用する「反和食」に和食をアップグレードすることにより、大幅に解消することができます。
反和食のやり方で炒め物を作ることにより、世界の多くの料理を1つの系統の料理法・調味料に翻訳することが可能となり、家庭料理をシンプルに作ることができるようになります。
和食は精進料理に夢中になって炒め物をキャッチアップしそこねた
それでは最初に、日本と中国における料理の歴史、および和食がどのようにして炒め物をキャッチアップしそこねたのかを見てみましょう。
炒め物は料理における巨大なイノベーション
炒め物は、ネットで手に入る情報によれば、強い火力を可能とするコークスの出現にともなって「北宋」の時代に誕生し、その後「南宋」から「元」の時代にかけて発展・普及していったとされています。
北宋・南宋および元の時代は、
- 北宋 960年~1127年
- 南宋 1127年~1279年
- 元 1271年~1368年
です。炒め物はこの時代から大きく発展し、現代の中国料理は炒め物なしには考えられないものになっているといえるでしょう。
炒め物は、
- 料理を手早く作ることを可能とする
- 油と香味野菜により、水による煮物ではつかない味をつけられる
- 具材が、油がしみ込むことで煮込んでもくったりしにくい
など、それまでの「発酵させる」「火で焼く」「煮る」などの料理法と比較して大きなメリットがあるために、中国に限らず世界各地で、料理法として取り入れられることとなっています。
炒め物の誕生は、「料理法についての巨大なイノベーション」であったといえます。
一方、仏教徒の料理である精進料理は、中国では、インド仏教が中国に伝来した後漢(西暦25年~)の時代に始まり、北宋・南宋の時代に大きく発展し、清(1616年~1912年)の時代に最盛期を迎えたとされています。
精進料理は、仏教の戒律にもとづいて、動物性の食材および五葷(にんにくやニラ、ネギ、玉ねぎ、らっきょうなど)が禁じられています。
現代でも中国においては、大規模な寺院などにおいて精進料理を食べられるとのことです。
しかし、精進料理はあくまでも、一部の人達「仏教徒」のためのニッチな料理であり、中国料理の本流は「炒め物」にあるといえます。
炒め物のイノベーションをキャッチアップしそこねた和食
中国で炒め物および精進料理が発展していった「北宋~元の時代」は、日本では「鎌倉時代(1185年~1333年)」に相当します。
和食はここで、炒め物と精進料理との2つのうち、本流ではなくニッチな料理である精進料理を取入れる選択をしてしまいます。
精進料理は、禅宗の伝来とともに日本に伝えられました。室町から安土桃山、江戸の時代にかけての武家政権が禅宗を支持したために、本陣料理や懐石料理などを生み出し、和食の本流を担っていくこととなっていきます。
炒め物については、江戸時代になって日本が鎖国したこともあり、和食に導入されることはついぞありませんでした。
和食は、炒め物のイノベーションをキャッチアップすることに完全に失敗したことになります。
精進料理に固執し、炒め物をキャッチアップできなかったため、日本は、
- 肉などの動物性食品とにんにくなどの五葷が使えなかったため、脚気が大流行するなどの栄養不足が深刻化する
- 料理を手軽に作ることができる炒め物が導入されなかったため、家庭で料理を作るために膨大な手間ひまがかかる
などの苦難にあえぐこととなります。
このことは、
- 航空機が開発されて空中戦の時代になったにもかかわらず相も変わらず戦艦にこだわり、巨大戦艦「大和」を作ってはみたもののすぐに撃沈され、結果として戦争に負けてしまった
- ITのイノベーションにキャッチアップできなかったため、携帯電話がスマホに負けて「ガラケー」と化してしまった
などの、日本によくあるクソださい負けパターンの典型的なものだといえます。
戦後になって炒め物を導入するも立ちはだかる「にんにくの壁」
以上のように、炒め物イノベーションのキャッチアップに失敗した和食ですが、それから800年ほどもたった戦後になり、ようやく重い腰を上げ、炒め物を導入しようとします。しかし、「にんにくの壁」が立ちはだかっているために、導入は遅々として進みません。
そのために、日本の家庭料理は各国の炒め物が並存する、混迷を極めた状態となっています。
ようやく始まった炒め物の和食への導入
炒め物の日本の家庭への普及は、戦後になってようやく始まったといわれています。
ここでは「炒める(または油で焼く)」だけの料理と、「炒める+煮る」の料理の両方を「炒め物」と呼ぶこととします。
それ以前から日本にあった炒め物は、料理全体から見ればマイナーなものである「きんぴら」と「すき焼き」です。それが、フライパンが家庭に普及するのとともに、炒め物が家庭で盛んに作られるようになっていきます。
戦後に普及した、かろうじて「和食」の範疇に含めることができる炒め物は、「肉じゃが」と「豚生姜焼き」、それに「野菜炒め」です。
これらはそれぞれ、海外にすでにある料理を元にし、それを和食にアレンジして生まれています。
- 肉じゃが …シチューを和風にしたものといわれている
- 豚生姜焼き …焼肉(朝鮮料理)が起源だといわれている
- 野菜炒め(みそ炒め) …中華料理が起源
「海外のものを日本風にアレンジする」ことは、自動車や家電製品などの作られ方を見ても「日本の得意技」といえるでしょう。
しかし、不思議なことに、上の3つ以外で和食に取り入れられた海外の炒め物の例は、ほとんど見当たりません。それどころか、カレーやハンバーグ、餃子、キムチ鍋などなど、戦後日本の家庭料理の多くは、海外の料理をそのまま日本へ持ってくることとなっています。
このことは、海外の炒め物を和食にアレンジすることが難しいことを意味しています。
海外の炒め物を和食にアレンジすることが難しいのは、「にんにく」を和食が拒否しているからです。
海外の炒め物をアレンジできないのはにんにくを和食が拒否しているため
海外の炒め物を和食にうまくアレンジができないのは、和食がにんにくを拒否していることが理由です。
海外の多くの炒め物は、にんにくを使います。味のベースとなるにんにくを抜いてしまうと、料理の味が全体として成り立たなくなることがしばしばあります。
たとえば、世界で人気の味つけの1つである「トマトソース」は、にんにくを抜いてしまうとトマトのえぐみが前面にでてしまい、全くおいしくありません。したがって、トマトソースをにんにく抜きで和食としてアレンジすることは困難です。
肉じゃがと豚生姜焼き、野菜炒めに関しては、にんにくなしでの和食化が成功した稀な例であることになります。
しかし、肉じゃがよりはシチューやカレーが、豚生姜焼きより焼肉が、和風の野菜炒めより、本格的な中華風の炒め物の方が「おいしい」と思う人は多いのではないでしょうか?
アレンジした結果がオリジナルの料理と同等か、それ以上においしくなければ、アレンジをする意義がそもそもありません。
また、特に豚生姜焼きの場合には、豚肉とは相性が良くない醤油を多く使わなければいけないため、にんにくを使わない場合には、みそやバター、ゴマなどの隠し味がどうしても必要となってきます。
生姜焼きを、例外項としての隠し味なしで、和食のシンプルな体系にしたがっておいしく作ることはできません。
以上のように、和食がにんにくを使わないことが障壁となり、
- 海外の炒め物を和食にアレンジすること自体がまず難しい
- アレンジしても、多くの場合にオリジナルの料理よりまずくなるため、アレンジをする意義がそもそもない
- アレンジしても、多くの場合に隠し味などが必要となり、シンプルに作ることができないために、料理法が普及しにくい
などのことが発生し、海外の炒め物を和食にアレンジし、それを普及させることが難しくなっていると考えられます。
そのために、海外の料理は近年では、和食にアレンジされることなくそのままの形で、家庭に流れ込むようになっています。
和食にアレンジできないために日本の家庭料理は混迷を極めている
海外の料理が和食にアレンジされることなくそのままの形で家庭に流れ込むことにより、日本の家庭料理は「混迷を極めている」といえる状態になっています。
さまざまな国や地域の料理は、それぞれに一貫した体系や作り方があり、また調味料も独自のものが使われます。たとえば、中国と韓国とイタリアでは、おなじ「炒め物」であっても異なった作り方をしますし、調味料も異なります。
それらをそのまま「本格的」に作る際には、新しい国や地域の料理を作ろうとするたびに、作り方を1から学び、調味料を買い揃えなければなりません。
料理をあれこれ試してみたことがある人は、使わずに棚や冷蔵庫の肥やしになっている調味料が山積みされていることも多いはずだと思います。
しかし、そんな国は日本だけではないでしょうか?
中国人の家庭では、作られる料理は中華料理だけでしょう。韓国人の家庭でも、韓国料理だけが作られているはずです。
よほど熱心な「料理研究家」などは別として、世界の多くの国や地域においては家庭料理は、自分の国や地域の料理法だけを学び、調味料を揃えれば済むようになっていると考えられます。
そう考えれば、さまざまな国や地域の料理を取り入れなければならない日本の家庭料理は「混迷を極めている」ということができるでしょう。
日本の家庭で料理を作るためには、世界の他の国や地域と比較して、大きな労力が要求されると考えられます。
日本の家庭で料理を作ろうとする際にありがちな、
- 料理を始めて長年たってもレシピを見ないと作れない
- レトルトなどの既成品を多用する(カレールウなど)
などのことは、そのような混迷を極めた状態の産物なのではないでしょうか。
にんにくを使う「反和食」を用いれば炒め物はアレンジできる!
炒め物のイノベーションをキャッチアップできなかった和食は、世界の他の料理から大きな遅れを取りました。しかし、その遅れはまだ挽回されてはいません。
日本の家庭料理は、いまだに混迷を極めた状態のままにあるといえます。
料理を家庭でシンプルに、限られた調味料だけで作れるようになるためには、世界の料理を受け入れることができるだけの枠組みを和食が持たなければなりません。
和食をアップグレードする「反和食」の取り組みが、日本の家庭料理の混迷を極めた状態を解決できる大きな方法であると、筆者 高野は考えます。
反和食の構成
反和食の構成は、記事「反和食の基本「やきそば」の作り方とウスターソースの考え方」で使用した図式をふたたび引用すると、次のようになります。
和食に使われる調味料は、醤油とみりん(砂糖)、それに魚介のだしです。ここに、酢とスパイス(ショウガ・コショウ・唐辛子など)およびにんにくを追加することにより、反和食の構成となります。
反和食の構成は、自由度が高く、応用範囲が広いです。
醤油は、抜いてしまうことができ、その場合には「塩味」となります。また、ケチャップやトマト缶などで置き換えることもできますので、さまざまな味に対応できます。
炒め物を作る際には「油」を使います。この油を、オリーブオイルやごま油を使い分けることにより、洋風にも中華風にもすることができます。
調味料と油とは独立に考えることができ、たとえば、ケチャップを使用した場合なら、オリーブオイルを使えば洋風に、ごま油を使えば「酢豚」っぽい中華風になります。
このように、反和食の構成が高い自由度と広い応用範囲を持つために、海外の多くの料理は、反和食の一貫した体系に落とし込むことができます。
現地での作り方をいちいち細かく再現したり、調味料を買い揃えたりする必要はありません。
以下に、反和食・炒め物の例として、
- 青椒肉絲(通常の醤油味の例)
- 麻婆ナス(パンチがある醤油味の例)
- もやしスープ(塩味の例)
- 肉じゃが(洋風の例)
のレシピを紹介します。
反和食・炒め物の作り方1:青椒肉絲(醤油味の例)
青椒肉絲は炒め物として「基本中の基本」といえると思います。材料は、ピーマンと玉ねぎ、豚肉だけなので安く手に入るものばかりですし、作り方もシンプルです。
使用する調味料をまとめると、次のようになります。
調味料 | 内容・分量 | 応 用 |
醤油 | 大さじ1 | ケチャップ・大さじ2とする |
みりん | 小さじ1 | |
酢 | 小さじ1 | |
スパイス | ショウガ・1センチ大ほど、コショウ・少々 | ショウガを大幅に増量すれば生姜焼きになる |
魚介味 | オイスターソース・小さじ1 | |
にんにく | 1かけ | |
酒 | 大さじ1 | |
油 | サラダ油・小さじ1+大さじ1 |
この青椒肉絲の味つけは、本場中国の味つけとほぼ変わりません。ただし、みりんを少量入れるところだけが違います。みりんを入れた方が、コクが出て絶対にウマイです。
みりんや砂糖で料理に甘みをつけるのは和食のオリジナルとなりますが、和食の影響を受け、中国や韓国でも料理に甘みをつけるようになっていると聞きます。
応用として、まず醤油のかわりにケチャップを使用することがあります。酢豚的な味になり大変おいしいです。
ケチャップを使う場合には、ケチャップと相性が抜群の卵を加えることによりさらにおいしくなります。
また、ショウガを大幅に増量すれば「生姜焼き」にもなります。
その場合、下のレシピではショウガはみじん切りにすることになっていますが、すりおろすのがいいです。
反和食・青椒肉絲のレシピ
1. ピーマンと玉ねぎを先に炒めて皿にとり出す
フライパンに、
- サラダ油 小さじ1
- ピーマン 1~2個(タテに細く切る)
- 玉ねぎ 4分の1個(タテに細く切る)
を入れて中火にかけ、ピーマンが「しんなりとし始めたかな」という程度まで1~2分サッと炒めて皿にとり出す。
2. 肉を炒める
改めてフライパンに、
- サラダ油 大さじ1
- にんにく 1かけ(みじん切り)
- ショウガ 1センチ大くらい(みじん切り)
- 豚肉 100グラムくらい(肩ロースなどのかたまり肉を細く切れば青椒肉絲らしくなりますが、コマ肉を食べやすい大きさに切るのでも問題は全くありません。塩とコショウ、酒、醤油それぞれ少量をもみ込み、片栗粉小さじ1をまぶし付けておく)
を入れて中火にかけ、豚肉の色が変わるまで2~3分じっくり炒める。
3. ピーマンと玉ねぎを戻して味つけする
ピーマンと玉ねぎをフライパンに戻し、30秒ほど温める程度に炒めたら、あらかじめよく混ぜ合わせておいた、
- 酒 大さじ1
- 醤油 大さじ1
- みりん 小さじ1
- 酢 小さじ1
- オイスターソース 小さじ1
- 片栗粉 小さじ1
流し入れる。
30秒~1分ほど炒め、トロミがでて味が絡みついたら、コショウ・少々を振って皿に盛る。
応用:卵とピーマンのケチャップ炒め
醤油をケチャップで置き換えるケチャップ炒めも大変いいです。
作り方は、上の青椒肉絲と基本的におなじです。
ただし卵は、ピーマンと玉ねぎの次に単独で、2個分ほどをとき混ぜたのを小さじ1のサラダ油でじっくり炒めて皿にとり出しておき、ピーマン・玉ねぎといっしょに戻します。
反和食・炒め物の作り方2:麻婆ナス(パンチのある味の例)
「麻婆」は、本格中華のレシピを見ると、
- 甜麺醤(テンメンジャン)
- トウチ
- 花椒(ホワジャオ)
などの中国調味料が使われることが一般的です。
しかし、これらの調味料は、他の料理への使い方がよくわからないため、購入すると冷蔵庫の肥やしとなる可能性がたいへん高い危険なものです。
中国調味料は、豆板醤さえあれば、他のものは一般的な調味料で置換えが可能です。
甜麺醤の置換え方
甜麺醤は、簡単にいえば「甘いみそ」です。したがって、「みりん+味噌」で置換えることができます。
ただし、その際に置換える味噌は、通常のものではなく、火を通しても風味が飛ばない「八丁みそ(赤だし味噌・だしが入っていないもの)」を使うことが必要です。八丁味噌は、あればそれなりに便利ですが、料理に加える際に液体でとき混ぜる必要があるなど、使用がやや面倒です。
したがって、さらにこれを「みりん+醤油」で置換えることができます。
醤油を使った麻婆は、スッキリとした味わいになり、全く何の問題もなくウマイです。
トウチの置換え方
トウチは、大豆を発酵させたもので要は味噌の仲間です。
したがって、上と同様に「醤油」で置換えて全く問題ありません。
花椒の置換え方
花椒は、中国山椒です。独特の風味と口内が痺れるような辛みがありますが、これをやはり、風味と辛味があり同じ「椒」の字がつく「粗挽き胡椒」で置換えることで、問題は全然ありません。
以上のように置換えを行うことにより、麻婆の調味料は反和食のスキームにぴったりと収めることができます。
反和食・麻婆なすの調味料は、次のようになります。
調味料 | 内容・分量 |
醤油 | 大さじ1 |
みりん | 大さじ1 |
酢 | 大さじ1 |
スパイス | ショウガ・1センチ大、豆板醤・小さじ1、粗挽きコショウ・わりとたっぷり |
魚介味 | オイスターソース・小さじ1 |
にんにく | 1かけ |
酒 | 大さじ1 |
油 | サラダ油・大さじ1、ゴマ油・小さじ1 |
青椒肉絲の調味料とくらべると、こちらはみりんと酢、スパイスが大幅に増量されています。それにより、「パンチのきいたさわやかな味」になります。
また、ただ炒めるだけの青椒肉絲とは異なり、麻婆ナスは、炒めてからさらにスープを加えて煮込む料理です。煮込む際には、鶏ガラスープの素を使います。
麻婆ナスを作るコツ
麻婆ナスはを作る際には、本格中華のやり方では、ナスは素揚げしてから煮込みます。
しかし、家庭で揚げ物をするのは油の処理などが面倒ですし、脂をよく吸うナスを揚げるとカロリーも高くなります。
ナスは、普通に炒めるので全く問題ありません。
ただし、塩もみしてから炒めるのが絶対におすすめです。ナスを塩もみしてから炒めると仕上がりに「プリプリ感」がでて、「え、何これ、マジ?」と叫んでしまうくらいウマイです。
反和食・麻婆ナスのレシピ
1. 豚ひき肉を炒める
フライパンに、
- サラダ油 大さじ1
- にんにく 1かけ(みじん切り)
- ショウガ 1センチ大(みじん切り)
- 豆板醤 小さじ1
- 豚ひき肉 100グラム程度
を入れて中火にかけ、豚肉からでる汁気がジュージューという音が収まってくるまで、2~3分じっくり炒める。
2. なすを加えてさらに炒める
- ナス 1本(タテ半分に切ってから1センチ幅程度の斜め切りにし、塩・ほんの1つまみ(小さじ8分の1)を振りかけて軽くもみ込む)
を加え、なすがしんなりし始めてくるまでさらに2~3分じっくり炒める。
3. 調味料とスープを加えて煮込む
一度火を止め、
- 酒 大さじ1
- 醤油 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 酢 大さじ1
- オイスターソース 小さじ1
を加えてふたたび中火をつけ、30秒くらい炒めて味をなじませる。
- 水 200cc
- 鶏ガラスープの素 小さじ1
を加え、強火で煮立たせてから弱めの中火くらいにし、3~4分コトコト煮る
4. ニラを加えてトロミをつける
- ニラ 2~3茎(1~2センチ長さのざく切りにする)
を加えてひと混ぜし、一度火を止める。
- 片栗粉 大さじ1+2分の1
- 水 同量
をよく溶きまぜた水溶き片栗粉をまわし入れ、全体をよく混ぜ合わせてから中火をつける。
1分ほど混ぜながら煮てとろみが付いたら、
- ゴマ油 小さじ1
- 粗挽きコショウ わりとたっぷり
を加え、ひと混ぜして皿に盛る。
反和食・炒め物の作り方3:もやしスープ(塩味の例)
和食の汁物や煮物では醤油を抜いた「塩味」はどうしてもおいしく作れないのに対し、反和食では、醤油以外にコクを出す調味料がバランスよく含まれているために、醤油を塩と置換えれば塩味とすることができます。
したがって、中華や欧米の料理によくある塩味も、反和食のスキームにそのまま取込むことができます。
ここで紹介するのは「タンメン」などでよく使われる中華風塩味のスープです。
調味料は次のようになります。
調味料 | 内容・分量 |
醤油 | 塩・小さじ4分の1程度に置換え |
みりん | 小さじ2 |
酢 | 小さじ2 |
スパイス | ショウガ・1センチ大、輪切り赤唐辛子・小さじ1、コショウ・少々 |
魚介味 | ナンプラ-・小さじ2 |
にんにく | 1かけ |
酒 | 大さじ2 |
油 | サラダ油・大さじ1、ゴマ油・小さじ1 |
汁気が多いため、上のレシピと比べて分量は多いですが、調味料の構成自体は、青椒肉絲の構成と、醤油を塩で置換えた以外はほぼ似たようなものです。
ただし、魚介味はオイスターソースではなくナンプラーを使います。ナンプラーは、オイスターソースと比べて色がうすく、味もさっぱりしているため、塩味の料理によく合います。
また、ゴマ油は、最後に少し加えることにより風味がでて、とても中華っぽくなります。
ゆでた中華麺を入れればタンメンになりますし、ギョーザなどを煮てもおいしいかと思います。
水を半量(200cc)として調味料を少し減らせば、ご飯と合わせて中華丼にもなります。
この塩味は、飽きが来ないため毎日でも食べることができます。
筆者・高野は、この味つけを多用しています。
反和食・もやしの塩味スープのレシピ
1. 肉と厚揚げ・香味野菜を炒める
フライパンに、
- サラダ油 大さじ1
- にんにく 1かけ(みじん切り)
- ショウガ 1センチ大(みじん切り)
- 輪切り赤唐辛子 小さじ1程度(2~3本分)
- 豚肉 100グラムくらい(ここでは肩ロースのかたまり肉を細く切りましたが、コマ肉を食べやすい大きさに切るのでも全く問題ありません。塩とコショウ、酒、醤油それぞれ少量をもみ込み、片栗粉・小さじ1をまぶし付けておく)
- 厚揚げ 2分の1~3分の1パック(1センチ厚さくらいの食べやすい大きさに切る)
を入れて中火にかけ、豚肉の色が変わり厚揚げにかるく焼き色がつくくらいまでじっくり炒める。
2. もやしなどの野菜を加えてさらに炒める
- もやし 1パック
- 長ねぎ 10センチ程度(5ミリ厚さくらいの斜め切りにする)
- しいたけ 2個(5ミリ幅くらいに切る。石づきも、一番下の硬い部分だけ取り、タテ半分に切って入れる)
を入れ、もやしが「しんなりし始めたかな」というくらいまで、2~3分炒める。
3. 水と調味料を加えて煮る
- 水 500cc
- 鶏ガラスープの素 小さじ2
- 酒 大さじ2
- みりん 小さじ2
- 酢 小さじ2
- ナンプラー 小さじ2
- 塩 小さじ4分の1程度
を加え、強火にして煮立てたら、弱めの中火くらいにして3~4分コトコト煮る。
4. ニラを入れトロミをつけて仕上げる
味を見て、塩気が足りなければ塩を加え、
- ニラ 2~3茎(ざく切り)
を加えてひと混ぜしたら、一度火を止める。
- 片栗粉 大さじ1
- 水 同量
を溶きまぜた水溶き片栗粉をまわし入れて、よく混ぜたらふたたび中火をつけ、1分ほど混ぜながら煮る。
トロミがついたら、
- ゴマ油 小さじ1
を加え、ひと混ぜして器に盛る。
コショウを好みでかけて食べる。
反和食・炒め物の作り方4:肉じゃが(洋風料理の例)
以上の反和食レシピは、いずれも中華を反和食に取入れたものですが、洋風料理を取入れる例として「肉じゃが」をあげてみたいと思います。
和食料理である肉じゃがは、「シチュー」を和食にアレンジしたものだといわれていますが、肉と野菜を煮込んだ料理としてヨーロッパには「ポトフ」もあります。
塩味の煮込みであるポトフは、和食にアレンジしようとすれば、「おでんだし」で肉と野菜を煮ることが作り方として考えられます。
しかし、ポトフの醍醐味であるともいえる、にんにくとオリーブオイル、それに粗挽きコショウの風味がなしでは、やはりちょっと物足りません。
反和食の枠組みを用いれば、ポトフはその良さを生かしながら、基本的に全くおなじ作り方で作れます。
調味料の構成は次のようになります。
調味料 | 内容・分量 |
醤油 | 塩・小さじ4分の1程度に置換え |
みりん | 小さじ1 |
酢 | 小さじ1 |
スパイス | 粗挽きコショウ・少々 |
魚介味 | ナンプラ-・小さじ1 |
にんにく | 1かけ |
酒 | 大さじ1 |
油 | オリーブオイル・大さじ2 |
洋風の煮込み料理に欠かせないとされるのは、ローリエ、およびトマトベースの味のときにはオレガノやタイムなどのハーブです。
しかし、これらの調味料も中華調味料の場合と同様、よっぽどしょっちゅう洋風料理を作るのなら別として、そうでなければ棚の肥やしになってしまうのは確実です。
反和食なら、これらの洋風調味料を使わなくても、全く不足がない味に作ることが可能です。
反和食・肉じゃがを作るポイント
ポトフは、炒めずに煮込み、オリーブオイルやバターなどを食べるときに好みで追加する方法と、炒めてから煮込む方法との、作り方に2種類あります。今回は、炒めてから煮込む方法を紹介します。
また、ポトフは通常、ゴロゴロのかたまり肉やソーセージなどを肉類として使用します。
しかし、今回はあくまで「肉じゃが」ですので、関東の肉じゃがでは一般的である「豚こま肉」を使用します。
中華系の料理の場合は、スパイスとしてショウガを使用します。
しかし、ショウガを使うと一気に中華風の味に持っていかれてしまいますので、洋風料理の場合には使用しません。
煮込む際のスープの素は、今回のレシピでは中華用の鶏ガラスープの素を使用しています。
洋風のコンソメを使ってもいいですが、鶏ガラスープの素で問題は全くありません。
ポトフは、通常トロミはつけません。ポトフを食べる際に現地の人は、汁はスープ皿に入れてスプーンで、具は普通の皿に盛ってナイフとフォークで食べるため、それで問題ないからです。
しかし、それだと箸で食べる日本人には、ちょっと食べにくいものとなります。
そのために、煮汁は片栗粉でトロミをつけて野菜にからめ、食べやすくしてあります。
豚コマ肉ではなくひき肉を使い、「そぼろあんかけ」のようにするのもおいしいはずだと思います。
反和食・肉じゃがのレシピ
1. 豚肉と野菜を炒める
フライパンに、
- オリーブオイル 大さじ2(オリーブオイルは、カロリーの問題はありますが、たっぷりの方がおいしいです)
- にんにく 1かけ(みじん切り)
- 豚こま肉 100グラムくらい(食べやすい大きさに切り、塩とコショウ、酒、醤油それぞれ少量をもみ込んでおく)
を入れて中火にかけ、肉の色が変わるまで2~3分じっくり炒める。
つづいて、
- じゃがいも 2個(皮をむき、2~3センチ大に切る)
- ニンジン 2分の1本(1~2センチ大に切る。ニンジンの皮はむかなくていいです)
- 玉ねぎ 2分の1個(1~2センチ幅のくし切りにする)
を加え、全体に油がなじむまで2~3分炒める。
2. 調味料とスープを加えて煮込む
一度火を止め、
- 酒 大さじ1
- みりん 小さじ1
- 酢 小さじ1
- ナンプラー 小さじ1
を加え、ふたたび中火をつけて1分ほど炒めて味をなじませる。
- 水 200cc
- 鶏ガラスープの素 小さじ1
- 塩 小さじ4分の1
を加えて強火にし、煮汁が煮立ってきたら弱めの中火くらいにし、フタをして、途中で1~2度上下を返しながら10分煮る。
ただし、顔をだしている部分は味がしみにくくなるために、途中で1~2度上下を返すようにします。
4. トロミをつけて仕上げる
一度火を止め、
- 片栗粉 大さじ1+2分の1
- 水 同量
をよく溶きまぜた水溶き片栗粉をまわし入れ、じゃがいもを崩さないよう気をつけながらやさしく混ぜる。
ふたたび火をつけ、鍋返しをしながらトロミがしっかりと付くまで1分ほど煮たら皿に盛り、
- グリーンピース
- 粗挽きコショウ
をかけて食べる。
まとめ
反和食の枠組みは、海外のさまざまな炒め物を、共通したシンプルな作り方として取入れることを可能とします。頭の隅に置いておけば、海外の炒め物を取入れるにあたり、現地の作り方を本格的に再現したり、独自の調味料を使用したりする必要はありません。
また、反和食の枠組みは、料理を適当に作ることにも役立ちます。
反和食の枠組みには、具材の自由度はもちろんのこととして、加えて調味料および油に大きな自由度があります。それによって多彩な料理を、レシピを見ることなく自ら生み出すことも可能とします。
反和食のコツを覚えて、ぜひより一層料理を楽しんでくださいNE!