きのうは数日前から、大阪・生野にあるコリアタウンで催される、「コリアタウンまつり」に行こうと思っていた。
大阪で、韓国の料理を食べたり、韓国食材を買ったりするのは「鶴橋」が有名だ。
駅のまわりの広大なエリアに、焼き肉をはじめとした韓国料理、韓国食材などの小さな店が、まさに韓国の市場のよう、迷路のように張り巡らされたアーケードの細い路地の両側に、びっしりと軒をならべている。
しかしさらに、そこから南東に10分くらい歩いたところに、「生野コリアタウン」がある。
聞くと、鶴橋駅のまわりは「ニューカマー」と呼ばれる、1世~3世くらいの在日コリアンが多いそうだ。それにたいしてコリアタウンは古くからある街で、100年以上前からコリアンたちが住みはじめ、現在では4世~5世の人もふつうにいるとのことである。
「日本最大の韓国食料品マーケット」として知られ、東西600mほどの「御幸森商店街」に、130以上の店が集まっているそうだ。
ここで年に1度のお祭りがあるとのこと。
生野コリアタウンには、一度行ってみたいと思っていた。お祭りがあるとなれば、ちょうどいい機会なわけだ。
コリアタウンまつりのことを知ったのは、コリアタウンで毎週1回、基本は土曜日営業している豚まん店「豚まん王子」のツイートからだ。
次回の豚まん王子は
11/7(土) お休み
11/8(日) 営業11/8(日)は生野最大のフェスティバル「コリアタウン祭り」。屋台、ステージ、パレードと盛りだくさんの一日楽しめるイベントなのでたくさんの方に遊びにきてほしいです!!
— 豚まん王子 (@butamanouji) November 5, 2015
豚まん王子の店主は、在日コリアン差別煽動へのカウンターにも参加していて、現場で何度か、顔を合わせたことがある。
この豚まんが「うまい」というのが、カウンターの人たちのあいだで評判で、ツイッターでもちょくちょく話題になっている。おれも以前、カウンターへの慰労として差し入れされた豚まん王子の豚まんの、冷えたのを食べたことがあり、それが冷えていたにもかかわらず、実にうまかった。
「ぜひ今度は、蒸したての温かいのを食べてみたい」と思っていたので、これはちょうどいい機会。
さらにコリアタウンで、韓国の食べものを食べながらビールを飲めば、くつろいだ一日が過ごせることになるのは、まちがいがないわけである。
ところがコリアタウンまつりに行くにあたり、一つ、大きな問題があった。
「朝、早く起きられるか」ということだ。
おれはいつも、一日のはじめにまずブログを更新する。ブログ更新が終わるのは、12時を目標としてはいるものの、実際には1時ごろ。これが前日に飲み過ぎて二日酔いだったりすると、3時とか4時になってしまうこともある。
コリアタウンまつりは、10時30分~16時まで。これを満喫するには、遅くても12時ごろには、到着する必要がある。
そうなると、家を10時には出ないといけない。
いつもの生活を、3時間も、前倒しにしないといけないわけだ。これは「とうてい不可能だ」と思われた。
前日のおとといは、いつものごとく、飲み過ぎた。それで早寝はできず、いつもの時間に寝たのだが、、
なんと朝早く、パッチリと目が覚めたのだ。
しかも朝早く目が覚めたときには、いつもならグズグズと二度寝するのに、きのうはシャッキリ起きて、仕度ができた。
これはやはり、明らかに、そのあと遊びの予定が入っていたからだろう。人間、遊びの予定があると、ここまで変われるものかと、我ながらおどろいた。
仕度をしたら、サクサクとブログを更新。
そして予定通りの午前10時に、めでたく家を出ることができた。
鶴橋の駅を降り、10分くらい歩くと、コリアタウンの入り口が見えてくる。
この門は、おまつりのために設けられた、中に空気が入ったビニール製のもので、いつもはここにはないようだ。
やがて、いつも設置されている門が見えてくる。
韓国食材やら、韓国の屋台料理やらを出す店が立ちならび、街並みは、まさに韓国。
やがて歩いて行くと、豚まん王子の屋台が見つかった。
コリアタウンのど真ん中、東西に走る御幸森商店街と、南北に走る一条通の角、3ヶ所にある門のうち、真ん中の門の下にある。
豚まんが、蒸し器で蒸されている。
さっそく2つ購入し、向かいにある「HIRO’S GUEST HOUSE」で食べることにする。
HIRO’S GUEST HOUSEは、1階がオープンのカフェ・バーになっている。
飲み物さえ注文すれば、食べ物の持込みは、何でもOK。
もちろんビール。
昼から飲むビールがうまいのは、言うまでもない話。
ホカホカの、豚まん。
これは、ウマイ。
まず皮が、やや硬めの仕様で、適度な食べ応えがあっていいのである。
そして餡は、もちろんジューシー。
しかもただジューシーなだけでなく、濃厚なコクがある。これは豚まん王子の、ていねいにスープを取ったり、香味油を作ったりなどの、創意工夫の成果だそうだ。
価格は、1個200円。
この豚まんは、おれがこれまで食べた豚まんの中で、まちがいなく一番うまい。
豚まんを食べ終わったら、コリアタウンの探索へ。
もちろん、買い食い。
ヤンニョム・チキン。
コチュジャンの甘辛いタレにひたした鶏肉を焼いたもの。実にウマイ。
それから、トッポッキ。
韓国の餅であるトッポッキと、さらに「おでん」と呼ばれる、じゃこ天のような魚のすり身が、甘辛いタレで煮られている。
まさにこれは、韓国風のおでんだろう。
かなり強い甘みがあり、ちょうど名古屋の味噌おでんと、辛みを除けばおなじような味だと思った。
さらに、イカのチヂミ。
店頭で売っているのを買うと、店の中で食べられるようになっている。
チヂミは、皿いっぱいのが300円。さらにキムチが、たっぷり盛られて200円。この激安価格は、きのうに限ったものではなく、いつもだそうだ。
道行く人を眺めながらビールを飲むのは、あまりにも気分がよく、結局ビールは3杯飲んだ。
コリアタウン内にある公園では、イベントも催されている。
「大池中学校PTAおやじバンド」が演奏していたのは、「イムジン河」。
やはりコリアタウン内にある「御幸森天神宮」には、ハングルで書かれた石碑があった。
「難波津に咲くやこの花冬籠り 今は春べと咲くやこの花」という、1600年前の歌だとか。
生野はもともと「猪飼野」とよばれ、古来から、朝鮮半島からの渡来人が多く住む場所だったようだ。この歌も、百済からの渡来人「王仁(わに)博士」が、この御幸森天神宮の祭神・仁徳天皇について歌ったものなのだそうだ。
時代は下って江戸時代、朝鮮通信使が日本に来た折、日本の通訳がこの歌をハングルに表記して、通信使に送ったのだとのこと。
この石碑は2009年に、日本と朝鮮・韓国の友好をねがい、歌の日本表記・ハングル表記を刻み、建てられたものだという。
日本と朝鮮半島は、この例からもわかる通り、古来から長い期間、密な行き来をしていたのだ。古来から来ていた渡来人は、戸籍もなかった時代だから、今はふつうに「日本人」になっていることだろう。
今、激しい在日コリアン差別の嵐が吹き荒れている。
しかし日本も、きちんと詫びるべきことは詫び、取るべき責任は取った上で、在日コリアンと共存・共栄できる道を、模索しないといけないはずだ。
HIRO’S GUEST HOUSEに戻ると、カウンターの知り合いが何人かいた。
そこで、さらに腰を落ち着ける。
居合わせた、60代くらいの在日の男性と、少し話した。
やはり思っていた通り、「在日と、韓国に住む韓国人では、料理の味つけがちがう」そうだ。
在日は、日本に住み、日本の料理をふつうに食べる。そのうまさも知っている。
日本の料理は、味つけの基本は、「砂糖と醤油」。この砂糖と醤油に、在日がニンニクを入れるようになったものが、いわゆる「焼肉のタレ」の起源だそうだ。
韓国でも、砂糖は使う。でも在日の料理のほうが、より甘みが強いとのことだった。
おれは非常に、「なるほど」と思った。
日本の料理と韓国の料理の境界で、それらが融合しながら、新しい料理が生まれているのが、「在日の料理」なのかもしれない。
話に夢中になっているうちに、あっという間に夜になり、場はお開きとなった。まだ7時だったから、もうかなり飲みつづけているとはいえ、時間的には中途半端だ。
そこで、もう一軒、顔を出していくことにした。
向かった先は、西成あいりん地区にある、中国人居酒屋「えいちゃん」。
何しろここは、ママをはじめとしたお姉ちゃんたちが皆カワイイ。
その上、客にきちんと楽しんでもらおうと、下世話なエロ話をしてみたり、カラオケのデュエットをしてみたりと、並々ならぬ努力をする。
しかも価格は、飲み物400円程度、食べ物300円~600円の、居酒屋価格。
これはどう考えても、通ってしまうのは仕方がない。
料理も、ウマイ。
どれもシンプルな塩コショウ味で、「中国人が家庭で食べる味そのまま」という趣きが、またいいのである。
えいちゃんに10時までいて、あとはシメのラーメン。
すっかり酔っ払い、電車に揺られて家に帰った。
けっきょく、都合10時間ほど、飲み続けていたことになる。
でもたまに遊ぶのなら、最低そのくらいのことはしないと、遊んだうちには入らないのだ。
「遊んだら仕事もね。」
そうだよな。