きのうの昼は、蒲田駅東口にある「とんかつ 丸一」で、ロースカツ定食。たったの1100円でありながら、3センチはあろうかという厚切り肉の、中はほんのりピンク色。しかも、臭みはまったくない。本当に、死ねるのだ。
おれは、豚肉が好きなのである。これは、関東人だからかもしれない。地球最後の日の前日には、塩コショウでさっと炒めた豚うす切り肉を、たらふく食いたいと思っている。
豚肉のなかでも、特に好きなのは脂身。そのなかでもロースの「プリッ」とした脂身は、「いくら食べてもいい」と思えるほどだ。
でも豚の脂身は、あまり食べると翌日お腹をこわすから、実際にはそれほど食べられるわけではない。
そういう豚肉好きにとって、やはり「とんかつ」は、一つの金字塔ともいえるものだ。
衣で覆われ、うまみが封じ込められた厚切りのロース肉にかぶりつく。やわらかな脂身にサックリと歯が通り、口の中に濃厚なコクが広がる、、
これが、人生の快楽の最大のものの一つであることは、疑う余地がないはずだ。
さてこのとんかつ、「最強の店」が蒲田にある。この店のとんかつを上回るとんかつは、少なくともおれがこれまで住んだことがある名古屋、広島、京都には、ない。
東京には、もしかしたら他に、おいしい店もあるかもしれない。でも東京では、「とんかつはこの店」と決めているから、他の店では食べたことがなく、知らない。
それが、「丸一」。
JR蒲田駅東口から、「蒲田東口中央通り」を10分ほど、さらに東に歩いたあたりにある。
基本は昼のみの営業で、夜も営業しているのは、水曜日と土曜日のみ。昼でも夜でも、行けばズラリと行列ができている。でも昼の場合だと、わりと回転は早いから、待っても20~30分だと思う。
昼のメニューは、ロースカツとヒレカツ。
ロースカツ定食が1100円というのは、とんかつの値段としては、安い方ではないかと思う。
しかもこの値段は、20年くらい前から変わっていない。
最近は、豚肉の値段も高騰している。それなのに、値上げせずに頑張るところに、この店の誠実な姿勢がはっきり見てとれると思う。
店内は、カウンター席のみ10席あまり。
隣の席との距離が近くてちょっと狭いが、それは、この値段であれだけのとんかつを出すには必要なことだから、ガマンが必要。
大将は、なみなみと油が張られた大鍋の前でとんかつを揚げ、女将さんとパートさん2人くらいが、洗い物をしたり、お皿を用意したり、お勘定をしたりする。
大将も女将さんも、温厚で感じがよく、店の雰囲気もとても明るい。
5分くらい待つと、とんかつが出てくる。
定食は、ご飯と豚汁、お新香。
そのとんかつなのだが、まずスゴイのは、何といっても、その厚さ。
3センチ近くはある。
肉は、厚い方がうまいのは、知れた話。しかしこのとんかつ定食は、1100円なのだ。
1100円で、これだけの厚さのとんかつを出す店は、世界広しといえどもこの店だけなのではないだろうか。
そして、その厚い肉の、中は「ほんのりピンク色」なのである。
肉は、火を通し過ぎると、硬くなる。だからビフテキでも、生っぽく焼き上げる。
ところが豚肉の場合、一般には、火をよく通さなければいけないといわれる。これは豚肉が、菌を持っているからだ。
この店は、「無菌豚」という、特別な育て方をした豚を使うことで、中がピンク色で出しても大丈夫なようになっているのだ。
さらに特筆すべきなのは、この肉には、豚特有の臭みが、まったくない。
なので、レモンを絞り、卓上に用意されている岩塩だけをつけて、食べられる。
これが本当に、死ねるわけである。
豚肉のうまみそのものを味わうには、ソースを使わず、この岩塩か、せいぜいからし醤油くらいで食べるのがおすすめだ。
このように、丸一では、極上のとんかつが、1100円で食べられる。
この店を「最強」と呼ばずして、「最強」という言葉に意味があるのか、検討が必要だろう。
きのうはとんかつを食べてから、宿にもどって昼寝をした。
それがあまりに気持ちがよくて寝すぎてしまい、あまり仕事ができなかったのも、仕方がないことである。
とんかつ 丸一
- 住所 東京都大田区蒲田5-28-12
- 電話 03-3739-0156
- 営業時間 火・木・金 11:00~14:00
水・土 11:00~14:00、17:00~20:00 - 定休日 日曜・祝日、月曜
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