【四条大宮 来夢来人 2】伝説のナンパ師

【四条大宮 来夢来人 3】そしてまた、誰もいなくなってしまった。」のつづき

僕は、翌日もまた「来夢来人」をおとずれた。

来夢来人では工藤静香似の女性、青田典子似の女性と、そこにいた女性2人が2人とも、突如としてあらわれた近藤真彦似の男性にさらわれた。とくに青田典子似の女性は、僕といい雰囲気で話していたのに、瞬間的に持っていかれた。

これは何か、尋常ではないもののように思われた。

「マスターなら、何か知っているかもしれない……」

そう思ったのだ。

 

 

地下へむかう階段を降り、厚い木の扉をあける。薄暗い店内のカウンターに、藤竜也似のマスターは今日もひとりだった。老眼鏡をかけ、何やら帳簿仕事でもしていた様子のマスターは、僕が入っていくと顔を上げ、老眼鏡をはずして言った。

「いらっしゃいませ。そろそろいらっしゃるのではないかと思っていました」

「あはは、きのうもおとといも、おなじような時間に来てますもんね」

「いえ……。あの男性、マッチさんが、なぜあんなにいともたやすく女性を誘惑できるのか、不思議に思われたんでしょう?」

「はい、実はそうなんです。マスター、何かご存知なんですか?」

 

マスターの顔は、ちょっと青ざめているようにも見えた。僕をしばらく凝視したあと、視線を右下へ落とし、唇をギュッと閉じて、何か思い悩んでいるかのような素振りをみせた。

やがて、あらためて僕を見据えると、意を決したかのように話しはじめた。

 

「あのマッチさん、伝説のナンパ師の生まれ変わりなのかもしれません」

「伝説の、ナンパ師……?」

「はい。この辺りは古くから栄えた地域で、秀吉の聚楽第もありましたし、そのあと二条城もできました。当然、遊ぶ場所もたくさんあり、そこに出入りする男女も多くいました。

そこで代々言い伝えられてきた伝説があり、それが、『伝説のナンパ師』です。私もこの伝説は、やはりバーを経営していた祖父からはじめて聞きました。

そのナンパ師が最初に現れたのは、応仁の乱の直後だったと言われています。戦乱で荒廃してしまったこの土地で、未婚・既婚を問わず数百人という数の女性を自分のものにしてしまったそうです。

当時は性についての考え方は、いまよりだいぶ大らかだったと言われています。それでも、それだけ多くの女性を自分のものにしてしまえば、やはりまわりの男性は怒ります。

それでそのナンパ師は、女性に捉えられた男性たちに捉えられ、火炙りにされてしまったのだそうです……」

(つづく)

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