郡司ペギオ-幸夫『群れは意識をもつ』は死ぬかと思うほどおもしろいのである(3)

 
『群れは意識をもつ』では、これまでは説明できなかった群れの性質について、郡司氏の理論がはっきりと明らかにすることが分かりやすく書かれている。

群れは意識をもつ

群れは同調圧力によるのでなく、自由をきちんと担保しながら形作られているのである。

 

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郡司ペギオ-幸夫氏は、ネットを見ると「理学者」となっている。しかしふつうは、理学といっても物理学とか、生理学とか、宇宙物理学とか、もう少し詳しい分野をつけるものだろう。

それがなく、ただ「理学」となっているのは、郡司氏のあつかう領域がそれだけ幅広く、一つには絞れないことを意味している。

実際郡司氏は、生物学はもちろんのこと、物理学、脳生理学、さらには哲学的な領域にまで手をのばし、論文や著書を書いている。それらはいずれも、複雑な数式や論理式が駆使される高度なもので、単に「知っている」などでないのは言うまでもない。

 

また郡司氏は、ただ理論家にはとどまらない。学生と共同しながら粘菌や昆虫などを使ったさまざまな実験も行なう。

コンピュータを使ったシミュレーションにも長けているし、これだけの知識や技術を一人の人が身につけ、縦横に駆使するのは、どうすれば可能になるのか、全く分からない。

 

あるとき郡司氏と飲みに行ったら、そのあと当り前のように研究室に戻って行った。

論文や著書の数も多く、学生の指導もしているから、膨大な仕事を日々こなしているのは間違いがないだろう。

 

その郡司氏だが、これまで一般には、「難しいことを言うわりに成果に乏しい」と見られるところがあった気がする。複雑な数式なども使いながら論理を展開していくのだが、最後に「だから何なのよ?」と聞いたとき、簡潔に答えられる結論を持っていなかったのではないだろうか。

哲学なら、それでいい。哲学は、簡潔な結論などを求めるものではハナからなく、論理が展開されていく、そのあり方そのものに意味があるだろう。

でも郡司氏は、哲学者としてではなく、自然科学者として、「生命とは何か」を明らかにしようとしている。

であれば、自身の考えを何かはっきりとした、分かりやすい形で示す必要性を、ご本人もこれまで重々感じていたのではないかと思う。

 

しかし郡司氏は、ここ数年の取り組みのなかで、それをはっきりと突破したとぼくは見る。1年前に発行された著書『群れは意識をもつ』は、これまでの郡司氏の著書とくらべて圧倒的にわかりやすい。

一つには、それは編集者の力添えもあっただろう、哲学的な用語が極力減らされ、平明な、日常使われるのと変わらない言葉で書かれているのも理由となる。

でもそれ以上に、郡司氏にその書き方の変化をもたらしたのは、内容そのものの分かりやすさではなかったかと思うのである。

 

この本の中で郡司氏は、「群れがいかに形作られるのか」について、一つの理論を展開している。

動物の「群れ」を研究するのは、ただ単に動物について明らかにするにとどまらない。「細胞の群れ」である脳や、「人間の群れ」である人間社会を、明らかにするための見通しを与えるものになるだろう。

郡司氏によれば、これまでの理論では、群れは「同調圧力」によって作られるものと考えられていた。鳥や魚がたがいに近くに寄って、速度を合わせる。そうして個々の「自由」を押し殺し、まわりと同じ動きをすることが、群れが成り立つための必要条件とされていた。

 

ところが近年、コンピュータによる画像解析の技術が進歩して、鳥の群れなどを撮影し、そこから鳥一羽一羽の動きを追いかけられるようになった。群れの中の鳥がどこに、どのような速度で飛んでいるかを、全て明らかにできるようになったのだ。

するとその観測結果から、これまでの同調圧力による理論では説明できない、数々の現象があることが分かってきた。

鳥は群れの中で、ただ同じ動きをしているのではないそうだ。もみくちゃになり、たがいに交錯して、決して速度が揃っているのではないのにもかかわらず、群れ全体として見ると、一つの方向へむかっていく。

そのような、群れの新たに見えてきた性質を、「説明する理論を見つけなければいけない」という機運が急速に高まってきた。

 

郡司氏は、その理論を、見事に見つけているのである。

自身でカニの群れを観測し、その観測結果を自身の理論がはっきりと説明することを示している。

『群れは意識をもつ』にはそれが分かりやすく書かれていて、説得力はきわめて高い。

 

郡司氏の理論によれば、群れは同調圧力などによって形作られているのではなかった。

自由がきちんと担保され、むしろその自由こそが、群れを形作る駆動力となっていたのである。

 

「ワクワクするね。」

群れは意識をもつ

ほんとだよ。

 

 

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