焼酎より飲みやすい!泡盛の特長とおすすめを紹介

お酒

沖縄で「島酒」と呼ばれる泡盛は、本土で焼酎に親しんできた筆者からみて焼酎より飲みやすいです。ここでは泡盛の歴史と特長、焼酎とのちがい、飲み方、おすすめの泡盛などについてまとめました。

 

泡盛は焼酎より飲みやすい

泡盛は「キツイ」「クセがある」などのイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。筆者も以前はそうでした。

ですが沖縄へきて泡盛を飲むようになり、その考えは変わりました。

600年以上の歴史がある泡盛は、タイ米と黒麹を原料とし、常圧蒸留で造られて、さらに熟成しますので、まろやかでありながらしっかりとした味があり、本土の焼酎よりむしろ飲みやすいです。

泡盛の歴史

泡盛は15世紀後半にはすでに造られていたと記録から推定され、600年以上の歴史があります。タイなどの東南アジア、および福建省を中心とする中国に起源があるといわれます。琉球王朝にとって泡盛は貴重な贈答品でもありました。薩摩藩、江戸幕府などへも贈られていたようです。

第二次世界大戦の沖縄戦で壊滅的な被害をこうむった沖縄は、泡盛の酒造所もすべて失いました。戦後になって酒造りを再開しようとしましたが、泡盛を造るために必要な黒麹がありません。

そこで首里酒造廠の責任者だった佐久本政良氏が米軍の攻撃で木っ端微塵になった戦前の泡盛工場跡を捜しまわり、戦前に黒麹の受け皿として使われていたムシロが土に埋もれているのを見つけました。

そこでこのムシロの繊維を蒸した米の上に散らし、米袋でくるんで一昼夜置いてみると……。米の表面は、黒麹菌の存在をしめす黒い色に変わっていました。

「生きていた、生きていたぞ、黒麹菌が!」

佐々木氏は涙を流して喜んだとのことです。戦後の泡盛復興は、全てがここからスタートしました。

泡盛の特長と焼酎とのちがい

泡盛は酒税法上は乙類焼酎(本格焼酎)に分類されますので、「焼酎の一種」ともいえます。ですが焼酎とは異なる、はっきりとした特長がいくつもあります。

特長1 原料がタイ米であること

泡盛は米を使ってつくられます。この泡盛に使用される米は、現在はすべてタイ米ですが、はじめからそうだったわけではなく、長年にわたる試行錯誤の結果としてタイ米に落ち着きました。

王朝時代のことは不明とのことですが、明治時代は沖縄の米とあわせて中国や朝鮮の米が使われていた記録があるそうです。明治時代末期になり、中国米の価格が上昇したため、ベトナムやミャンマー、台湾などアジア各地の米が輸入され、泡盛製造に使用されました。

タイ米は大正末期に輸入がはじまり、昭和に入って泡盛の原料として定着しました。タイ米は製造上のメリットとして、

  • 硬質でサラサラとしているので作業がしやすい
  • 温度管理がしやすい
  • アルコールの収穫量が多い

などがあるそうです。

またタイ米を使うと日本の米を使うより、できた泡盛のコクが深くなるそうです。泡盛の独特なコクは、タイ米を使うことにも関係しているのではないでしょうか。

特長2 黒麹を使うこと

本土での酒造りでは日本酒には黄麹が、焼酎には白麹が使われるのにたいし、泡盛では黒麹が使われます。この黒麹、発酵の際に大量のクエン酸を発生するため、もろみが腐敗しにくく、高温多湿な沖縄で酒造りをするのに適しています。

黄麹を使用する日本酒づくりは、腐敗を避けるために冬場にしかできませんし、作業場には関係者以外は入れずに徹底した防菌対策をほどこしたうえで行います。

本土の焼酎も明治以前は黄麹を使用していましたが、大正に入って沖縄から持ち込んだ黒麹が使われるようになり、現在では黒麹の突然変異種である白麹が使われています。

黒麹はクエン酸を生成しますので、できる泡盛にも酸味があります。これにより、泡盛は辛口の味わいになっています。

特長3 常圧蒸留を行うこと

泡盛をつくる工程は、まず蒸した米に黒麹を加えて米麹にし、ここに水と酵母を加えて発酵させます。十分発酵したところで蒸留しますが、泡盛の場合、この蒸留方法が基本は「常圧蒸留」であるのにたいし、本土の多くの焼酎は「減圧蒸留」を行います。

常圧蒸留は大昔から行われている蒸留法で、原料の個性を多く引き出すことができます。それに対して減圧蒸留は、圧力を下げることによって沸点を40~50℃にし、雑味を抑え、フルーティーな味にする効果があります。

コクのある酒がいいか、それともフルーティーな酒がいいかは好みです。消費者のニーズに合わせ、最近では泡盛も減圧蒸留でつくられるものもあるそうです。

特長4 古酒があること

泡盛は長期間おいて熟成させることにってできる「古酒」の存在が特筆すべき特長です。古酒はもちろん高価ですが、ウイスキーや紹興酒などとも似たまろやかなコクがあり、大変ウマイです。

現在は「3年以上貯蔵したもの」が古酒と表示できることになっていますが、「仕次ぎ」によって原理的には100年でも200年でも熟成させることができるそうです。現在でも戦火をかいくぐった150年物の古酒が首里に残っています。

ビンのなかでも熟成する泡盛

蒸留酒を熟成させること自体は世界で珍しくありません。ウイスキーでも、長期間熟成させたものは風味が増し、味がまろやかになります。

ですがウイスキーの場合なら、樽から出してビン詰めしたら、もう熟成は進まないとされています。ウイスキーなどの洋酒は樽に入れて貯蔵され、この樽からバニラやスモーキーなどの風味をもらって熟成するため、樽から出してビンに入れるともうそれ以上風味が増さないからです。

それに対して泡盛は、ビン詰めしたあとでも熟成が進みます。

以前本土で泡盛がブームになり、それにともなって売れ残りの返品も増えたそうですが、沖縄の泡盛業者はそれを喜んで引き受けたそうです。時間がたてば、ビンの中の泡盛はそれだけ熟成しておいしくなっているからです。現在ではそれを本土の業者も知ったので、泡盛の返品は皆無になったとのことです。

泡盛は原料がタイ米であること、黒麹を使うこと、常圧蒸留を行うことなど独自の特長がいくつもあり、それによって他のお酒にはあまり含まれない、

  • エチルアルコール以外のアルコール類
  • 脂肪酸
  • 脂肪酸エステル
  • 硫黄系化合物
  • フェノール化合物
  • アセドアルデヒド

などの成分が豊富に含まれているそうです。これらの成分が相乗的に作用しながら、古酒の芳しい風味を生むようです。

長期間の熟成を可能とする「仕次ぎ」

古酒は酒造所だけでなく、酒造所で造られた新酒をつかい、一般家庭でも造られます。戦前は100年、200年を超える古酒が数多く、名家の家宝とされていたそうです。

これだけ長期間の熟成を可能とするのが、独特の貯蔵法である「仕次ぎ」です。

一般にお酒を長期間置いておくと、どんなに密封したとしてもどうしても蒸発します。蒸発は沸点が低いアルコールから生じますので、ただ放置していると、お酒は最後は酢や水になってしまいます。

泡盛百科より

仕次ぎでは、複数のカメを用意します。通常は3個程度だそうですが、名家は1番~6番まで6個のカメを使ったそうです。

それぞれに泡盛を満たして貯蔵を開始しますが、飲むために汲み出すのはかならず1番のカメからです。1番のカメのお酒が飲んだり蒸発したりして減ったら、2番から汲み出して1番に足します。すると2番のカメのお酒が減るので、今度は3番から汲み出して2番に足し、そうして順にお酒を移動させながら、6番のカメには新酒を足します。

このような仕次ぎを行うことにより、お酒の質を下げずに熟成を進めることができます。仕次ぎは世界でも珍しい沖縄独自の方法で、ほかにおなじ方法でお酒を熟成させるのは、フランスのシェリー酒だけだそうです。

泡盛の飲み方は?

泡盛は、なんとなくストレートやロックで飲むイメージがある人も多いのではないでしょうか。度数の強い泡盛を小さなグラスに入れてチビチビやるものだと、筆者も以前は思っていました。

ですが筆者が沖縄へ引っ越して、居酒屋やスナックで観察したところによると、まずみんな水割りで飲んでいます。

泡盛の度数は30度くらいのが標準ですので、これを泡盛3・水7くらいで割れば10~15度のワインの度数くらいになり、飲むのにちょうどよくなります。

もちろん上等な古酒など特別にウマイのは、水で割るともったいないのでストレートか、せめてロックがおすすめです。ですが普段のみの普及品は圧倒的に水割りで飲まれており、本土で焼酎をのむ感覚と完全におなじです。

焼酎より飲みやすいってほんと?

泡盛は、筆者は去年の夏に沖縄に2週間滞在したとき、ほとんど初めて飲みました。20年くらい前に東京の沖縄料理店でほんのちょっと飲んだことがありましたが、「キツイ」「クセがある」という印象で、それ以来敬遠していたのです。

民宿の大将が作ってくれた水割りでしたが、これを飲み、それまで自分が持っていた泡盛のイメージと全くちがうので驚きました。飲みやすいのです。「焼酎より飲みやすい」と、筆者はそのときハッキリと思いました。

飲みやすい理由1 泡盛はまろやか

まず泡盛は、焼酎と比べて「まろやか」です。これは米が原料だからではないかと思います。麦焼酎や芋焼酎よりはるかにクセがありません。

麦焼酎や芋焼酎は、強い風味が個性であり、好きな人にはそこがたまらないところだと思います。ですが飲みやすさについてはまろやかな泡盛がはるかに上だと思います。

飲みやすい理由2 しっかりとしたコクがある

ですが泡盛はただ飲みやすいだけではありません。しっかりとしたコクがあります。

筆者は以前、本土の米焼酎を試してみたことがあります。米が原料なだけあってたしかにまろやかで飲みやすいと思いましたが、「風味もコクもない」と感じ、けっきょく風味が勝る麦・芋の焼酎にもどりました。

泡盛は、本土の米焼酎とはちがいます。風味こそ麦・芋焼酎には負けますが、はるかにしっかりとしたコクがあります。

これはたぶん、原料がタイ米であることや、黒麹を使用すること、さらに常圧蒸留や熟成など泡盛独自の製法によるのだと思います。まろやかさとコクについては、泡盛は蒸留酒でありながら、日本酒に似たところがあると思います。

飲み過ぎやすいので注意!

しかも泡盛は飲みやすいだけでなく、いくら飲んでも気持ち悪くなりません。焼酎だと、ある程度まで飲めば、それ以降はお酒がまずく感じるようになるものですが、泡盛はそれもありません。

ですので飲み過ぎには注意しましょう。

筆者はスナックなどで泡盛を飲むようになってから、翌日深刻な二日酔いになることが続きました。焼酎だと2合も飲めば十分なのに、泡盛だと気づいたら、4合瓶がカラになっていたりしてました。

泡盛はかなり抑制して飲まないと危ないですし、シークワーサーやウコン茶など、アルコールの分解を促進するもので割って飲むのもおすすめです。

泡盛でおすすめなのは?

泡盛でおすすめの銘柄を紹介します。筆者はお酒はおなじ銘柄を飲みつづけるタイプですので、泡盛はいくつかの銘柄しか飲んだことがありませんが、筆者が行きつけの名護市内のスナックでお客さんから人気のものも含めました。

おすすめ1 美しき古里

「美しき(うるわしき)古里」は名護市の隣村である今帰仁村(なきじんそん)にある今帰仁酒造が製造販売しています。ですので名護市では一番人気ともいえる銘柄で、スーパーやコンビニでも紙パックの製品が目立つ場所においてあり、筆者が初めて飲んだのも、また今飲んでいるのもこの美しき古里です。

緑色のラベルの20度と黄色いラベルの30度とがあり、20度は女性や若い世代にアピールする製品で、スッキリとして飲みやすいのが特長です。それに対して30度は、古酒が20%ブレンドされていてコクがあります。

筆者は沖縄に来てしばらく20度を飲んでいましたが、わりと最近30度に切り替えました。水割りにしてもしっかりと味がある、30度がやはりウマイです。

泡盛全体のなかでは、この美しき古里は普及品的な位置づけだと思います。おいしい銘柄はほかにいくらでもあると思いますが、毎日飲む酒としては、価格もリーズナブルでおすすめです。

おすすめ2 菊之露

宮古島の老舗酒造所が造る「菊之露」の「VIPゴールド」は、たぶんおいしいんだと思います、4合瓶で美しき古里の1升瓶とおなじ値段がしますので、ちょっとお金がありそうな人がよく飲んでいます。筆者が行きつけのスナックで仲良くしている60代社長もいつもこれです。

VIPゴールドは、8年貯蔵の古酒をベースに造ったものです。あと普及品タイプの「ブラウン」も、酒場にはよく置いてあります。

おすすめ3 ゴールド龍

金武(きん)町の3年古酒である「ゴールド龍(たつ)」は、行きつけのスナックのママがおすすめのお酒です。試しに1杯飲んでみたことがありますが、たしかにまろやかな味わいでウマイです。

おすすめ4 残波

読谷村(よみたんそん)のお酒である「残波(ざんぱ)」も、居酒屋などでよく見かけます。「ホワイト25度」と「ブラック30度」の2つがあり、ホワイトは泡盛でありながらフルーティーな味わいで、女性にも人気です。

おすすめ5 久米島の久米仙

久米島のお酒「久米島の久米仙」も、人気銘柄の一つです。酒場によく置いてあるのは、まろやかな味わいが特長の「ブラック」と普及品の「ブラウン」です。

まとめ

泡盛の歴史や特長、飲み方と、おすすめの泡盛を紹介しました。泡盛をまだ飲んだことがない人は、ぜひ試してみてほしいです。

上でも書きました通り、著者は沖縄へきて泡盛を飲みはじめ、それまで「キツイ」「クセがある」と思い込んでいた泡盛がまろやかで、飲みやすいことに驚きました。飲みやすさにおいては焼酎をはるかに上回ると、筆者は確信をもって断言します。

普段のみのお酒として高いポテンシャルをもつ泡盛は、宣伝の仕方によっては本土で30年くらい前にウイスキーが一気に焼酎に置き換わったように、今度は焼酎を置き換える可能性すら秘めていると思います。

泡盛を「キツイ」「クセがある」と思い込んでいる人は本土にまだまだ多いのではないかと思いますので、このブログ記事が泡盛の正しい姿を伝える一助になれば幸いです。

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