【本部・そば屋よしこ】お店の名前そのままの、一から十まで店主の配慮が行きとどいた沖縄そば店

名護から本部(もとぶ)までを、山の中を抜けていく県道84号は「そば街道」と呼ばれていて、車で走ると沖縄そばの店にいくつも出くわす。
そのなかで、以前から気になっていた「そば屋よしこ」へ行くことにした。




なぜ気になっていたのかといえば、そのネーミングなのである。

沖縄でそば屋の名前は、名護の場合だと「宮里そば」「新山そば」「我那覇そば」など地名がつくことが多い。那覇の場合だと、「首里そば」など地名のほか、「とらや」「だるまそば」など普通のものから、「すうまぬめぇ」「てんtoてん」など、すぐには何だかわからない言葉が店名になっていることもある。

しかし圧倒的に少ないのは、人名がつけられたもの。これが広島のお好み屋なら、「みよちゃん」「さっちゃん」「かよちゃん」などなど、店主の名前をそのままつけたものが多いのだが、少なくとも名護のそば屋で、店主の名前がつけられているのはこの店を含めて2軒しか僕は知らない。

 

しかも店主の名前の入れ方が、「よっちゃん」と通称にするのは普通だろう。またもしそば屋だということをはっきりとさせたいなら、「よっちゃんそば」など、「よっちゃんのそばですよ~」と、通称を形容詞にもってくるのもわりと普通だと思う。

それが「そば屋よしこ」なのである。

本名であるよしこは、そば屋そのものなのである。

この圧倒的な存在感は、「焼肉 小倉優子」に匹敵するとすら思えるわけで、これが道を走るたびに目に入ってくるとなれば、気にならないわけがない。

 

早速お店に入ってみると、店内は広々している。手前にテーブル席が8卓と、奥には一段上がった座敷もあって、そこにお膳が4卓。
お昼どきを少しすぎた時刻だったが、土曜日だったからだろう、グループや家族連れの客でにぎわっている。

席にすわると、すぐにお茶を持ってきてくれた。

その茶碗に取っ手がついているのが、かわいらしいコダワリを感じさせる。

 

注文し、壁に目を移すと、広い店内の壁という壁一面に無数の写真が貼ってあることに気がついた。近くにあるのをよく見てみると、どれも店主・よしこさんらしき婦人がお客さんといっしょに写ったもののよう。

有名人との写真なら、大きく引き伸ばして額に飾る飲食店はよくあるが、こちらはまったくの無名人。
それをこれだけ膨大な数を撮影し、現像して壁に貼るだけでも大変な手間だろう。

しかしそうしてお客さんとの交歓を壁に刻んでいくことが、よしこさんにとっての生き甲斐であるのかもしれない。

 

その日はたまたま、お店のミスが連発してしまったようで、僕が「ジューシー(沖縄風炊き込みごはん)が終わったから」と注文したご飯も、持ってくる段になって「ご飯も終わっていました、ごめんなさい」となったし、ほかにも注文をまちがえたり、忘れたりしたのがいくつかあった。

でも店員が、ほんとうに申し訳なさそうに「ゴメンナサイ!」と言うものだから、僕も怒る気にはならなかったし、ほかのお客さんもみんな笑ってすませている。

それを見て、
「この店はお客さんに愛されているんだ……」
僕は思った。

店主であるよしこさんが誠心誠意、お客さんに向き合ってきているのだろう。

 

さてこの店、そば屋よしこの沖縄そばは、大雑把にいえばソーキ・三枚肉・てびちの大と小、計6種類。

 

僕はソーキそばの大を頼んだ。

どんぶりが、小のものと比べて直径が大きくなるのでなくて、深さが深くなるようになっているのが、威圧感がなくていい。

 

このそばが、普通といえば普通なのだが、またうまかった。

 

だしはうす味の、かつおだしが強めに利かせてあるタイプ。そこに乗せられているソーキが、うす味のだしに合わせてうすく味がつけられているのはもちろんなのだが、これまで食べた沖縄そばと比較すると、甘みが強めになっている。

この甘みが、いかにも昔の食べ物っぽくてとてもいいのだ。

いまは糖質はわりと敵視される時代なわけで、「糖質オフ」の食品もいろいろある。でも昔は甘みこそがおいしさのポイントであったのであり、じっさい京都や名古屋など古い街では、料理はどれも大変甘い。

甘めの料理でほっこりとした気持ちになるのが、昔流の「幸せ」だったのではないか。

 

店主であるよしこさんは、そのほっこりとした昔の味を、時代に迎合することなく、自信をもって今に受けついでいるようだ。

お客さんは常連さんが多いようだったから、たぶんよしこさんのその味が好きで、通いつづけているのだろう。

 

お店を出て、僕は思った。
「この店は、1から10までよしこさんそのものなのだ……」

店内の膨大な写真や店員のふるまいも、そしてもちろんそばの味、さらに茶碗やどんぶりの形にいたるまで、よしこさんの細かな配慮が行き届いていることを感じる。
この店は、店主よしこさんの見事な作品、よしこさんの分身といえるものだ。

そう考えると「そば屋よしこ」のお店の名前は、ただ存在感があって印象深いというだけでなく、まさにこの店のあり方そのものを示したものであると思った。

 

そば屋よしこ
  • 住所 沖縄県国頭郡本部町字伊豆味2662
  • 電話 0980-47-6232
  • 営業時間 10:00~17:00
  • 定休日 金曜












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