【沖縄食堂・八重山の風 アカハチ】新百合ヶ丘のゴキゲンな沖縄居酒屋

「新百合ヶ丘の居酒屋を開拓しよう……」

今回の大晦日、僕は決意したのである。





 

例年なら、年末に買い出しをし、正月の料理としてそれなりのものを用意する。
大晦日はその準備が佳境に入っていて、夕食の年越しそばも家でつくって食べている。

しかし84歳になる入院している父の病院通いで実家に泊まり込んでいる現在、容態の急変はいつあるかわからないから、のんびり料理しているわけにはいかない。
それ以前に僕の場合、実家にいること自体がストレスになるたちだから、食事はできれば外でしたい。

となればこの大晦日、どこかの居酒屋でのんびり時間を過ごすのがベストであることになる。

 

実家から最寄りの繁華街は、新百合ヶ丘。
ここに居心地のいい居酒屋があれば何も問題ないのだが、新百合ヶ丘はおっさん向きの居酒屋が少ないことで、つとに知られているのである。

 

元々は麻生区役所の建物以外なにもなかった新百合ヶ丘は、40年くらい前、大規模に開発された。
駅前にいくつも並ぶファッションビルの最上階には、小洒落たレストラン街が設けられているけれど、もちろん酒飲みのおっさんは、そんなところではくつろげない。

ファッションビル以外にも飲食店はいくつもあるが、若者向けの居酒屋チェーンか、個人商店でもおしゃれ志向の店ばかり。
「ドヤ街がいちばん落ち着く」などというおっさんがつけ入る隙はなさそうだ。

しかも、日は大晦日。
ただでさえも飲み屋が少ないところにきて、年末年始は休む店も多いから、「新百合ヶ丘で大晦日におっさん向けの居酒屋を開拓する」というこの課題は、まさに絶望的、ミッション・インポッシブルであることになる。

 

しかし男には、絶望的とわかっていても、闘わなければならない時があるのである。
それは、いまだ。

この大晦日、もし居酒屋の開拓をあきらめてしまったら、僕は闘わずして、新百合ヶ丘に敗北したことになる。
それが恥でないとすれば、何を恥と呼べばいいのだろう。

 

つけ入る隙がないようにみえる新百合ヶ丘も、じつは皮を一枚めくれば、意外にフレンドリーだったということだって、十分あり得る。

新百合ヶ丘周辺に住んでいるのは、何も一戸建てを買って引っ越してきた、気取った中流サラリーマンだけではないはずだ。
一人暮らしで、大晦日に居酒屋で酒を飲みたいと思うおっさんだっているはずだろう。

であれば魚心あれば水心、そういう需要をくみ取る店があってもおかしくはないのである。

 

そういうわけで、僕は決死の覚悟で、新百合ヶ丘駅の南口に降り立った。

 

飾られたままになっているクリスマス・イルミネーションが、僕をあざ笑うかのようだ。

 

ネットでいくつか、スポットは調べていた。
まずネットの居酒屋ランキングで常に上位に入っている「京町家」は、もう年内の営業を終了していた。

でもこの店は、小洒落ているのはまちがいなく、もし営業していたとしても行かなかったと思われる。

それからラーメン店「町田家」の隣の居酒屋、ここはもし営業していたら入っていたと思うのだが、残念ながら終わっていた。

 

あとは南へ少し歩いたところにある「マプレ」。

 

「飲食街」は、すべて終了。

 

しかしこの建物で1軒だけ、「Bar Chit Chat」が9時から朝まで、営業することを発見した。

 

この時点で僕はほとんど、勝利宣言したい気持ちになった。
ドヤ街的な居酒屋とはちょっとちがうが、僕の守備範囲には十分入りそうな店である。

ただし9時までまだ2時間以上ある。
Chit Chatのマスターに教えてもらって、この時間でも空いていそうな店を訪ねていった。

 

教えてもらった店「Bar WOOD STOCK」は北口を出て、そのまま真っすぐ行った先を左に折れたところにある。

しかしこのとき、ここはまだ開店していなかった。

駅からここへ来るまでにあった店も、すべて年内の営業を終了している。

「どうしようかな……」

僕は所在なく、そのままさらに北方向へブラブラと歩いていった。

 

大きめの通りに出た。
すると通りの左斜め向かいに、もうやはり営業を終了しているauショップの2階部分が飲食店街になっているようだった。

早速通りをわたって近づくと、煌々と光り輝く看板も出ている。

 

「沖縄食堂……!!!」

僕は階段をかけ上がった。

 

すると「沖縄食堂・八重山の風 アカハチ」は、見事営業中だった。

 

「これは運命にちがいない……」

新百合ヶ丘で大晦日の午後7時、ただ1軒開いていた店が、沖縄に引っ越した僕が現在ハマりまくっている沖縄料理の店だとは、僕は神様に何度礼をいってもいい足りない気持ちになった。

 

さて、そのアカハチは、40歳くらいと思われるウチナンチューのマスターがやっている。

3年前の開業だとのこと。

店内は、7~8人が座れるカウンター席と、4人がけのテーブル席が3卓で、こじんまりとしてはいるが、パーティーなどもできそうだ。
男女6人のお客さんが、すでに先に入っていた。

 

メニューは、沖縄料理の一通り。

 

沖縄そばも各種ある。

 

まずはオリオンビールの生で乾杯。

そのあとは、沖縄の泡盛「残波」の黒を、ボトルで頼むことにした。

 

ただしこれが、笑えるのだ。
メニューには、たしかに「720ml」の価格が書いてある。

 

ところがそれを注文すると、残波は一升瓶だけで、720mlのボトルはないという。
それで一升瓶から、八重泉の空き瓶にじょうごで移し、提供されたという次第。

 

「メニューはちょっと前に作ったやつだから……」とのことなのだが、これは沖縄の言葉でいえば「てーげー」なのだ。
あまり細かいことにはこだわらないのが、沖縄人のスタイルだ。

 

ただしこれは、本土の人にとっては注意が必要なことかもしれない。

ネットで見かけたこの店の口コミに、「店に入ったら店主がソファーで爆睡していた。もう二度と行きません」というものがあった。

この店のマスターなら、お客さんがいなければ、いかにもやりそうで笑えるのだが、それを本土、特に新百合ヶ丘の小洒落た感覚からみると、「よくないこと」とする向きもあるわけだ。

もしメニューと実際に出てくるものがちがったり、お客のいない店内で店主が寝ていたりすることを、「許せない」と感じる人は、この店にはあまり向かないかもしれないとも思うところだ。

 

注文したのは、まず島らっきょう400円。

 

それからアシテビチー(豚足)700円。

どちらもコストパフォーマンスは非常に高く、本当はツマミをもう一品頼むつもりだったのが、テビチーの量がかなりあったため、お腹が一杯になってしまった。

 

アシテビチーは、これもメニューには煮込みタイプが載っているのが、実際に出てくるのはやわらかく煮込んだのを炙った焼きタイプ。
マスターは料理が好きで、新しいやり方をすぐに思いつくから、以前作ったメニューとは違ってきてしまうとのことなのだが、「ならばメニューも小まめに変えよう」とはならないのが微笑ましいところである。

この焼きタイプのアシテビチー、甘辛い味がよくしみて、とてもとてもうまかった。

 

それからこの店が最高だったのは、この日、ライブが入っていたこと。

ピンのお笑い芸人と、2人組の沖縄歌謡ユニットが呼ばれていて、これがまたとても良かった。

 

どちらもテレビにしょっちゅう出るほどではないにせよ完全なプロで、毎日のように各地でライブをしているらしい。
お客さんをうまく巻き込み盛り上げてくれるから、とても楽しく時間を過ごした。

この店では、月に2回くらい、ライブの日を設けているそうだ。
料金は投げ銭制となっている。

 

最後のシメは、もちろん年越しの沖縄そば。

「ソーキそば」を注文したら、入っていたのは三枚肉 笑
これも非常にうまかった。

 

沖縄には沖縄そばはいろいろな種類があるのだが、その中の一つとして、豚と鶏、昆布とかつお節でだしを取り、塩だけで味つけするタイプがある。
この店の沖縄そばはそれに近くて、スープは澄みきり、味は淡いのだが、しっかりとしたコクがある。

ただし沖縄の沖縄そばとちがうのは、この店ではかつお節を使っていないこと。

「かつお節を利かせると、本土の場合、うどんダシと区別がつかなくなるからでしょ?」

と聞いたら、「そうだ」との答えだった。
やはり沖縄と本土とでは、近所にあるほかの店がちがうのだから、それはちがった商売上の戦略が必要になるのは当然だ。

 

三枚肉は、箸でぷにゅっと切れるほど、やわらかく煮られている。
本当にしみじみとうまいから、もしこの店に来たときは、ぜひ食べたらいいと思う。

 

10時を過ぎ、酒も腹も一杯になってちょっと眠くもなってきたから、ほかのお客さんはまだいたけれど、お先に失礼することにした。

「これで新百合ヶ丘にしばらくいることになっても、居場所には困らなくなった……」

僕はほんわかした気持ちで家に帰り、布団に入って、新年を待たずにすぐに眠り込んでしまった。

 

沖縄食堂・八重山の風 アカハチ
  • 住所 神奈川県川崎市麻生区万福寺6-2-23 エムエスビル 2F
  • 電話 044-953-7271
  • 営業時間 11:30~24:00
  • 定休日 無休
  • ツイッターアカウント @wik94rb(ただしあまり頻繁には更新していない模様)












ランキングアップや拡散の、ご協力をいただけると嬉しいです。
にほんブログ村 料理ブログ 一人暮らし料理へ広島ブログ

-084 飲食店
-