「煮込み」は世界に類のない、日本独自の料理法なのである。(鶏とゴボウの煮込み)

2014/04/25

昨日は冷蔵庫の有りものを使い、鶏とゴボウの煮込みを作った。

鶏とゴボウの煮込み

「シチュー」の和訳となっている感もある「煮込み」は、実は世界に類のない、日本独自の料理法なのである。


 
昨日は鶏肉が冷凍してあり、使いさしの野菜も冷蔵庫にあれこれ入っていたから、それらを全部一つの鍋にたたき込み、ごった煮でも作ってやろうとおもっていた。

でもせっかく野菜が色々あるのに、それで一品にしてしまうのはもったいないと考えなおし、鶏肉にはゴボウだけを合わせることにして、あとは野菜を少しずつ組み合わせて計5品を作ることにした。

やはりぼくは日本人だからだろう、皿や小鉢が食卓にたくさん並ぶことに幸せを感じるのだ。

品数が増えれば、その分多少は手間がかかるが、べつに誰が待っているわけでもなし、少しくらい支度に時間がかかっても支障は全くないのである。

 

「煮込み」というと、今はカレーなどのシチュー類を「時間をかけてコトコトと煮る」という意味になっている。

しかし煮込みがそのような意味に捉えられるようになったのは、戦後になってからのことのようである。

自分でつくる うまい!海軍めし』を見ると、海軍のレシピで「煮込み」と呼ばれていた料理が2品掲載されている。

一つは今でいう「肉じゃが」で、もう一つは豚肉を味噌で煮た、「豚汁」に近いものだが、どちらも「汁を煮詰める」ようになっている。

 

汁を煮詰める料理法は、魚の「煮付け」に見られるものだが、強めの火で、比較的短時間に一気に煮上げるわけだから、「コトコト長時間煮る」のとは大きくちがう。

どうやら戦前は、煮付けとおなじやり方を肉に応用したものを「煮込み」と呼んでいたようなのだ。

 

今この意味合いで「煮込み」が使われるのは「もつ煮込み」「味噌煮込み」くらいのもので、日本的な意味での「煮込み」は一般名詞からは消え去ってしまったわけだが、それはもちろん、戦後になってカレーをはじめとする西洋の料理がどっと入ってきたからだろう。

家庭でも西洋風に料理をするようになり、日本風の「煮込み」は忘れ去られることになってしまったということだ。

ところがこの「西洋風」がクセモノなのであり、カレーやシチューを市販のルウを使って作ると、日本の料理でないのはもちろん、西洋の料理でもないものが出来てしまいがちだとおもう。

問題はルウの箱に書いてある「作り方」にあり、これのおかげで、ぼくも以前はその一人だったのだが、カレーだけは作れるけれど、西洋の料理も、日本の料理もわからない、料理について何もわかっていない人を大量に生み出していると、ぼくは僭越ながらおもう次第なのである。

 

カレールウの箱を見ると、煮込み時間は「20分」と書いてある。

これはぼくが子供のころもそうだったから、この「20分」はカレールウを商品化する過程の、比較的早い時期に決まったものではないかとおもう。

しかし肉と野菜を20分煮込むのは、全く解せない話である。

日本はもちろん、西洋にも、「20分の煮込み時間」は存在しない。

 

まず肉は、10~20分煮ると硬くなる。

そのあと豚肉なら1~2時間、牛肉なら5~6時間煮てまたやわらかくなるのであり、日本の煮込みはその硬くなるまえ、10分程度で煮上げることとなり、西洋のシチューは数時間をかけ、再びやわらかくなるまで煮ることになる。

また野菜にしても、日本のカレーに入れるくらいの大きさに切ったものなら、20分は煮過ぎであり、特にジャガイモなどは、20分も煮ると煮くずれてしまう。

日本の煮込みの10分の煮込み時間なら、ジャガイモも煮くずれることはないし、西洋では、肉をまずじっくり煮たあと、野菜を入れるようにするわけだ。

 

それではカレールウの箱に書いてある「20分」の煮込み時間は、どのようにして決まったのか。

それをあえてぼくが憶測してみれば、「メーカーの販売戦略」なのである。

 

まずカレーが「数時間煮込まないといけない」ものなら、そんなことに慣れない日本の主婦が受け入れるわけがない。

だからカレーの煮込み時間は、日本の煮込み時間に近いものである必要がある。

それなら「10分」にしたら良さそうなものである。

そうすれば、日本の煮込みとおなじで、肉も硬くならないし、野菜も煮くずれない。

 

でも10分ではいけない理由があったのだ。

それは、「10分では肉のうまみが煮汁に出ない」ことである。

 

実際の話、西洋のシチューと日本の煮込みは、どちらも似たようなものに見えるが、そこで行われることは全く異なる。

西洋で「煮込む」ことは、肉のうまみを煮汁に「出す」ことだ。

肉や野菜などさまざまな材料から出る「スープ」に、非常な重きを置くわけである。

 

それにたいして日本では、煮る際には基本的に昆布や削りぶしの「だし」を使う。

だしを使って煮込むというのは、すでに煮汁に十分なうまみがあるわけだから、煮汁にうまみを出すのではなく、材料に味を「入れる」ことが目的になる。

さらに煮汁を煮詰めることで、煮汁のうまみをすべて材料に「封じ込める」わけである。

 

このように「正反対」ともいえる西洋と日本の「煮込む」を何とか折衷するために、メーカーがひねり出した苦肉の策が「20分の煮込み時間」だったのだとぼくはおもう。

肉や野菜などの「材料」のことを考えれば、これはいかにも中途半端といえるのだが、メーカーにとっては、材料の是非より、カレーの「ソース」がうまければ、「ルウは売れる」と考えたのだろうとぼくは邪推する。

案の定、カレールウは大ヒットをしたわけだが、そのおかげで、西洋の料理も、日本の料理もわからない人も、大量に生まれたのだとぼくはおもう。

さらにそれで、日本の貴重な料理法である「煮込み」が絶滅したことは、ぼくは何とも残念である。

 

企業の営業・販売活動のために貴重な文化が死滅するのは、ありがちなことではある。

でも一旦なくなってしまった文化は、そう簡単には復活しないのだから、やはり文化は守られていかなければいけないのだとおもう。

 

というわけで、「鶏とゴボウの煮込み」である。

鶏とゴボウの煮込み

これはだしさえきちんと取れば、それ以外には手間もかからず、あっという間にできてしまう。

味つけは、「酒の肴」にすることを考え、少しうすめにしたところ、死ぬかと思うくらいうまかった。

材料は、ゴボウの他に、ニンジンやタケノコ、ゆでた里芋、レンコン、こんにゃくなどを入れてもいいのは言うまでもないのである。

 

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さて鶏とゴボウの煮込みを作るには、まずだしを取る。

煮込みにはだしは1カップでいいのだけれど、昨日は吸物も作ることにしたから、吸物2杯分で2カップのだし、計3カップのだしを取ることにする。

3カップのだしを取るには、水は3カップ半。

鶏とゴボウの煮込み作り方1

ここにだし昆布の切れっ端と、かつお節は2.5グラム入りのミニパックを3袋いれ、中火にかける。

煮立ってきたらアクをさっと取り、ごくごく弱火の、ほとんど煮立たないくらいの火加減に調整し、縮こまっていた昆布がビローンとのびるまで、5分くらい煮る。

鶏とゴボウの煮込み作り方2

昆布がのびたら、ザルにペーパータオルを敷いて濾せば、だしは出来あがりである。

 

あとは何のこともない。

鶏とゴボウの煮込み作り方3

フライパンに1カップのだしをいれ、酒とみりん、砂糖、うすくち醤油それぞれ大さじ1ずつをいれたら、大きめのひと口大に切った鶏もも肉250グラム、大きめのささがきにし、水にさらしたゴボウ1本分をいれ、フタをして強火にかける。

煮汁が沸騰してきたら、強めの中火くらいの火加減にし、そのままグツグツ10分煮る。

鶏とゴボウの煮込み作り方4

10分煮たらフタを開け、火加減を強火にし、上下を返して材料を煮汁になじませたりなどしながら、煮汁をすべて煮詰めれば完成だ。

 

青ねぎなどの青みを散らし、好みで七味をふって食べる。

鶏とゴボウの煮込み

こんな簡単にできるのに、ビックリするほどのうまさである。

 

鶏肉はモチモチ。

鶏とゴボウの煮込み

 
 

ゴボウもしっかり味がしみている。

鶏とゴボウの煮込み

 
 

昨日あと作ったのは、白菜と油揚げの吸物。

白菜と油揚げの吸物

だし1カップにたいし、酒大さじ1、うすくち醤油大さじ2分の1強、塩少々くらいで吸物の味をつけ、細く切った油揚げと白菜をサッと煮る。

この作り方は京都の郷土料理「菜っぱ汁」を真似たもので、菜っぱ汁はふつう小松菜や白菜菜、水菜、春菊など青菜をつかうが、白菜でももちろん悪いことはない。

しめじを入れるとさらにうまいし、薬味は昨日は一味にしたが、ユズの皮を浮かべたりすれば「料亭の味」になる。

 

それからあとは、大根とニンジンのなます。

大根とニンジンのなます

細く切った大根とニンジンを、まずは一つまみの塩で塩もみして10~20分おく。

しんなりしたら水で洗い、よく絞ったのち、酢1:みりん1、砂糖少々、塩ほんの少々の甘酢に20~30分ひたす。

これは本当は、ニンジンではなく「柿」でやると、さらにおいしいのである。

 

オニオンスライス。

オニオンスライス

細く切った玉ねぎにかつお節と味つけポン酢をかける。

 

皮とだし殻のじゃこ炒め。

皮とだし殻のじゃこ炒め

廃物の大根の皮やニンジンの皮、さらにはだし殻の昆布とかつお節を、ゴマ油と輪切り唐辛子、ちりめんじゃこでじっくり炒め、酒とうすくち醤油で味つけしてゴマをふる。

全くの廃物利用なのだが、これがまた非常にうまい。

酒の肴にはもちろんのこと、ご飯のおかずにもなるとおもう。

 

酒はぬる燗。

酒はぬる燗

2日つづけてパソコンなしの食事をし、食べるのに集中するやり方がわかったから、昨日はまたパソコンをつけ、ツイッターを復活した。

いや何、食べる時はしっかり食べ、パソコンに向かう時は向かうと、きちんと分ければよかったのである。

おかげでツイッターには、また妄言が多数、つぶやき散らされることとなった。

 

さらに昨日はシメも食べた。

白菜のにゅうめん

吸物を2杯分作ってあったので、今度はそこにそうめんを入れた。

 

昨日も晩酌は、非常に満足した。

どの肴も大変なうまさだったのだが、これは自分で、自分がいいように作っているのだから、当たり前なのである。

 

昨日は仕事もちゃんとしたしね。

チェブラーシカのチェブ夫

うん、がんばらないとダメだよな。

 

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