【四条大宮 来夢来人 3】いい雰囲気になりかけたところで近藤真彦似の男性がやってきた。

2016/07/20

「【四条大宮 来夢来人 3】南果歩似の女性がきた。」のつづき

僕はそのとき、南果歩に似た女性が本を1冊、カウンターテーブルの上に置いているのに気がついた。オレンジやピンクの柄が入った紙の、手製と思われるカバーに包まれたその本は、ハードカバーで、厚さが2センチ以上はある。

「何の本を読んでいるんですか?」

僕は南果歩にたずねた。南果歩は、恥ずかしそうな表情を見せ、

「これですか?村上春樹です。1Q84」

と答えて、本を僕に手わたした。

 




 

手わたされた本を受け取りながら、僕は質問したことをちょっと後悔した。そもそも最近、あまり本を読まない僕は、なかでも村上春樹が嫌いで、1Q84も書店ではじめの数ページを立ち読みし、「これはダメだ」と読むのを諦めていたからだ。

本のページをパラパラめくり、何とコメントしたらいいか、途方にくれる僕をみて、南果歩は「クスッ」と笑った。

「村上春樹はお嫌いですか?」

僕は、心を見透かされたような気がして、南果歩をちょっと驚きながら見た。

 

「そうなんです。何でお分かりになりました?」

「わたしも、村上春樹が嫌いだからなんですよ。村上春樹って、読者を引っかけようとするテクニックばかりが目立って、あざとい感じがしますよね」

「僕も、ほんとにそう思います。これまで村上春樹の作品は、3つ~4つを読もうとしたことがありますが、30ページ以上を読めた試しがありません」

「わたしもです。でもこれだけ売れている小説なので、あまり嫌っているのもどうかと思い、今回いまさらですが、1Q84を買ってみました。3分の1ほどを読んだところなんですが、やはりちょっと無理なので、読むのをやめようと思っていたところです」

「そうなんですか」

僕と南果歩に似た女性はいっしょに笑った。

「この人とは、もしかしたら気が合うかもしれないな……」

僕はおもった。

 

そのとき、ドタドタと階段を降りてくる音がした。

「近藤真彦似の男性だ……」

僕は、キュンと胸が苦しくなるような気がした。

南果歩似の女性とは、せっかく会話が、うまく回りはじめたところだ。

「それなのに、また持っていかれてしまうのか……」

そう思うと、近藤真彦似の男性を許せないような気持ちになった。

 

足音が地下まで降りてくると、ドアがあき、両手をズボンのポケットにつっ込んだ近藤真彦似の男性が、

「こんばんは」

肩を怒らせながら入ってきた。そのあとから、四条大宮の常連さんの男性たちも、5~6人、険しい顔をしながらドヤドヤと入ってくる。

近藤真彦似の男性が店の中まで歩いてくると、男たちはそれを取り囲むようにしながらいっしょに歩く。

近藤真彦と男たちは、南果歩似の女性のうしろで止まった。

(つづく)










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