【四条大宮 来夢来人 2】ナンパ師の被害を防ぐことはできないのか?

2016/07/20

【四条大宮 来夢来人 2 】伝説のナンパ師は、今年蘇ることになっていた。」のつづき

藤竜也似のマスターは、そこまで話すとショットグラスをとり出して自分の前に置き、ウイスキーをなみなみ注いで、それを一気に飲み干した。目を大きく見ひらき、鼻をふくらませて深呼吸し、「ようやく気をとり直した」という素振りを見せると、ふたたび僕をじっと見た。

 




 

「近藤真彦似の男性、このバーへは、おとといが初めてです。私も長年バーを経営していますけど、はじめてのバーに一人で入って、ものの30分もしないうちに女性をお持ち帰りするなどというのを、これまで見たことはありません。

さらにきのうは、高野さんが親しく話している最中の女性に話しかけ、その女性をさらって行きました。あの男性は、女性を口説くことに関して、人並み外れた力量を持っています」

そう話すマスターの、カウンターにおいた両手が、ブルブルと震えていることに僕は気づいた。

「怖れていたことが、いよいよ現実になってしまったと私は思います。

あの近藤真彦似の男性は、弥助の生まれ変わりに間違いはありません……」

 

その日は、来夢来人にほかにお客はいなかった。暗い照明のともったカウンターに、マスターと向い合って一人座って、僕はハーパーの水割りをおかわりした。

「これからこの界隈では、大変なことが起きそうだ……」

そのことだけは、僕にもわかった。女性がつぎつぎと、近藤真彦似の男性のものにされ、四条大宮の飲み屋街はパニックになるのだろう。

 

でもそれは、防ぐことはできないのか?女性にあらかじめ、近藤真彦似の男性についていかないよう、重々に念押ししておくなどすれば、被害を未然に防げるのではないだろうか?

ところが藤竜也似のマスターは、悲しそうに首を振る。

「60年前にももちろん、そう考えた人はいました。でもそれは、まったく効果がありませんでした。

女性は弥助の生まれ変わりに声をかけられると、自分を見失ってしまいます。魂を抜かれたようになり、言われることを何でも聞くようになってしまうのです」

 

「それから、女性を家から出さないようにすることも、効果がありませんでした。弥助の気配を感じるのか、女性は隙をみて家をぬけ出し、弥助の元へかけつけてしまうからです。

60年前は、奥さんを始終監視し、絶対に家から出さないようにしようとした男もいました。私の父です。

すると母は怒り狂い、女の力とは到底思えない力を出して、父を殴りたおし、家を出ていったそうです。そしてその直後、母も弥助のものにされてしまいました」

 

「すると、どうやっても弥助の被害を防ぐことはできないと?」

僕がそう尋ねると、マスターはうつむいた。そうしてしばらく、何かを考える素振りをみせ、やがてふたたび僕に向きなおって、こういった。

「一つだけ、弥助の被害を防ぐことができる方法があると、言い伝えられています……」

(つづく)










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