【四条大宮 来夢来人 2 】伝説のナンパ師は、今年蘇ることになっていた。

2016/07/20

【四条大宮 来夢来人 2】伝説のナンパ師」のつづき

藤竜也似のマスターは、そこまでを一気に話すと、少しのあいだ、目を下におとして口をつぐんだ。その先を話そうかどうしようか、まだ迷っているかのようにも見えた。

やがて意を決したかのように真っすぐに僕をみて、話のつづきをしはじめた。

 




 

「そのナンパ師、名前は『弥助』というそうですが、それが火炙りになって亡くなるとき、こう言ったのだとのことです。

『おれはきょうはここで死んでも、かならずふたたび蘇る。60年に一度ずつ生まれ変わって、お前らの子孫の娘を、すべておれのものにしてやるからな』

と。

そしてその言葉は、それ以来500年以上にわたり、恐るべきことに実行に移されつづけてきました。60年ごとに弥助の生まれ変わりとしかおもえない、手に負えないナンパ師があらわれて、このあたりの女性を手当たり次第、片っぱしに、本当に自分のものにしていくのです。





 

「自分のものにしていく、って、具体的にはどういうことなんですか?」

僕は尋ねた。

「女性に、自分のことを好きにさせ、夢中にさせてしまうのですよ」

マスターは答える。

 

「弥助の生まれ変わりは、べつに女性を襲うわけではありません。女性に声をかけることで、自分を好きにさせてしまうのです。

女性に声をかけることは、べつに犯罪でも何でもありません。でもそれにより、独身の女性はもとより、既婚の女性ですらも、まるで魔法にでもかかったように、男の言うことを何でも聞くようになってしまいます。

じつは前回、弥助の生まれ変わりがあらわれたときは、私の母も、その被害に遭いました。そのときは、その男の名前は『正治』で、『鶴田浩二に似ている』と、自分で言っていたとのことです。

おかげでうちは、家庭崩壊寸前にまで至ったそうです。まだ結婚していないカップルは、それが原因で別れてしまうことになったケースも多かったようです」

 

マスターは、再びそこで、口をつぐんだ。話しながら動揺しはじめたようで、目線が落ち着きなく動いている。

そしてようやく、辛そうに、声を絞りだすようにしてこう言った。

「その前回の60年後が、じつは今年にあたります。

弥助の生まれ変わりがいつ現れるのかを、このあたりの男たちは皆、怖れていたところだったんです……」

(つづく)










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