難民の故郷への想いにあふれたレシピ本。【海を渡った故郷の味】

2016/02/22

海を渡った故郷の味

日本で暮らす、世界15の国・地域から逃れてきた難民が、帰りたくても帰れない、故郷の味を再現するレシピ本。故郷への強い想いにあふれる良本で、実用性も高いと思う。

 





 

日本には、1万人以上の難民が現在暮らしているそうだ。

難民とは、政治・宗教・人種などのさまざまな問題で、生まれ育った国や地域から逃れなくてはならなくなった人のこと。中東・シリアで紛争によって400万人を超える人々が難民となり、ヨーロッパを初めとして各国へ向かったことが、最近大きなニュースになった。

 

言葉も勝手もわからない、頼れる親戚などもいない新たな土地で、子供を育て、生活を切り開いていかなくてはならない。

海を渡った故郷の味

『海を渡った故郷の味』より

 

そんな難民の人達が毎日の食事で食べるのは、帰りたくても帰れない故郷の味。祖母から母へ、母から自分へ受け継がれてきた家庭の料理を、故郷を思い出しながら作るそうだ。

この『海を渡った故郷の味』には、世界15の国や地域から日本へ逃れてきた難民の人達が紹介する、45の料理レシピが掲載されている。

 

ページを開くと、色鮮やかな写真の数々。

海を渡った故郷の味

『海を渡った故郷の味』より

 

まずサラダ、次にスープ・・・と掲載され、魚料理もけっこうある。

海を渡った故郷の味

『海を渡った故郷の味』より

 

もちろん、肉を使った料理や・・・、

海を渡った故郷の味

『海を渡った故郷の味』より

 

米を使った料理・・・、

海を渡った故郷の味

『海を渡った故郷の味』より

さらにはデザートまでが掲載されている。

 

僕は恥ずかしながら、この本のページを開き、料理の写真を目にした瞬間、思わず号泣してしまった。ページをめくりながらも、その涙は止まらない。

故郷に帰りたくても帰れない難民の人達が、苦しい日本での生活のなか、どのような想いでこれらの料理を作っているのか・・・。

それを想像しただけで、切ない気持ちになるのである。

 

また掲載されている料理がどれも色鮮やかに盛り付けられ、とてもおいしそうに見えるだけに、その切なさはなおさらだ。

これだけの強くて深い気持ちがこもったレシピ本は、世の中広しといえどもそうそうはないと思う。

 

それからレシピを見ると、これがまたおもしろい。掲載されている料理の地域は、

アゼリ・クルド、イラン、スリランカ、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、ミャンマー、カチン、カレン、チン、カメルーン、エチオピア、コンゴ、ウガンダ

となっている。これらの、中には名前も聞いたことがないような国や地域の人達がどんなものを食べているのか、レシピを見ると詳しく分かる。

 

たとえばアフリカ・コンゴの人が何を食べているかなど、大抵の日本人は知らないはず。

ところがレシピを見てみると、「牛肉とグリーンバナナのトマト煮込み」という料理では、牛肉と調理用バナナ・玉ねぎを、トマト缶にカレー粉を加えたもので煮込んだりする。バナナはお国柄と思うけれど、「トマト缶にカレー粉」などというのは、日本でも普通にやる味つけの仕方だろう。

それを知ると、これまで全く未知の土地だったコンゴが、いきなり身近に思えてくるのだ。

 

料理は他にも、スパイスを色々使ったもの、ニンニクとショウガがベースの中国風に近いもの、オリーブオイルやレモン汁を使った地中海風のものなどさまざまで、作り方を眺めながら、その土地と住んでいる人に思いを馳せることができる。

 

さらに掲載されているレシピを見て、料理を実際に作って食べてみると、またおもしろさは倍増する。

きのうは「鶏肉と小松菜のカレー」という、ミャンマーの「チン」という地域の料理を作ってみた。

海を渡った故郷の味

⇒ おなじみの材料・調味料で未体験の味!【鶏肉と小松菜のカレー】

 

材料は、鶏もも肉と小松菜に、玉ねぎ、ジャガイモ。調味料もニンニクと七味唐辛子、それに塩だけだから、日本でもなじみのものばかり。

ちなみに日本に長年住む難民の人達は、調味料や材料を日本で手に入りやすいもので代用するようにもなるそうだ。たぶんここで七味唐辛子が使われるのは、そういうことなのだと思う。

 

ところがこれをレシピを見ながら作り、食べてみて、ぶっ飛んだ。日本人である僕にとっては、完全に未体験の味なのだ。

最大のポイントは、七味唐辛子を薬味として使うのではなく、メインの調味料として使うこと。

おなじ調味料を使うのでも、考え方が違えば、出来るものもここまで違ったものになるかと、あらためて実感した。

 

ただし実際に作ってみて、この本にはちょっとした欠点があることも分かった。レシピの記述がちょっと大雑把すぎる嫌いがある。

分量が「適量」となっていたり、炒める時間や煮込み時間が「よく」となっていたりして、具体的に書かれていないことが多い。だから料理の初心者には、このレシピだけを見ても、実際に作るのは難しいのではないか。

 

ただしもちろん、料理をある程度経験している人ならば、問題なく作れるはず。

また写真やレシピを眺めるだけでも楽しいから、初心者は作るのは将来の課題として、とりあえず買ってみるのも絶対に悪くない。

 

全104ページ、フルカラーで、価格は1500円+税。

発行は「認定NPO法人 難民支援協会」で、本の売上は難民の支援活動に活用されるのだそうだ。

 






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