運動に参加したことがない人にこそ読んで欲しい。【ひきがね 島崎ろでぃー×ECD】

2016/02/12

ひきがね

先週渋谷で個展をひらいた報道写真家・島崎ろでぃーさんの写真と、ラッパー・ECDさんの文章による、路上で行われている抵抗運動の記録集。

ろでぃーさんの写真はたぶん100点くらいはあるだろうか。その写真のあいだに、ECDさんの文章がかなりのボリュームで載せられている。

ECDさんの文章は、ろでぃーさんの写真についてのコメントではない。運動に参加してこられたご自身の体験と想いが綴られている。

なのでこの本は、単にろでぃーさんの写真集というわけではでなく、ろでぃーさんとECDさんの共作により、今の路上での抵抗運動がどのようなものであるかを表現したものだといえる。

 

ろでぃーさんの写真については、個展でも見せてもらった。報道写真だから、まずは反原発や反安保法案、反差別などの運動が、実際にどのようにくり広げられているかがよくわかる。

しかしろでぃーさんの写真は「それだけではない」と、今回この本に載せられている写真を見てあらためて感じた。

 

表紙をひらくと、ブルトーザーの上に立ち、中指を立てる女性の姿が登場する。

ひきがね

これはおととし8月に渋谷で行われた、安倍政権打倒デモでの光景だ。ブルトーザーは、このデモを先導した。

女性は若く、おしゃれにも気を遣っていることがうかがえる。渋谷の街をそのまま普通に歩いていてもおかしくない。

 

その女性が、ブルトーザーの上に仁王立ちになり、中指を立てている。

伝わってくるのは、、、そう、強烈な怒り。

 

扉に使われているこの写真が、まさにこの本の内容を象徴しているように思える。

この本は、現代の運動を単に客観的に捉えようとしたものでは決してない。

ごくごく普通の人たちが、爆発的な怒りを表明する。そのことを、やはり運動に参加する自分自身の体験として、写真家が、そして文筆家が、表現したものだと思う。

 

ろでぃーさんの写真は、被写体がある特定の個人に絞られていることが多い。そしてその被写体が、カメラのレンズを見つめているものがたくさんある。

ひきがね

 

これはろでぃーさんが、運動の写真を撮るにあたって、実際に運動に参加する人とていねいに関係を結んでいったかららしい。それによってろでぃーさんは、運動する人たちにとって、単に「報道写真家」ではなく、「一緒に運動する仲間」となっているのだ。

いわばろでぃーさんは、運動を外からではなく、内側から捉えている。運動する人たちの「心」が見えると感じられるような写真がたくさんあるのは、それが理由なのだと思う。

 

このろでぃーさんの写真が、この本の縦糸だとしたら、ECDさんの文章は横糸だ。両者は独立でありながら交錯し、一つの世界を紡ぎだしている。

 

ECDさんは、貿易センタービルに旅客機がつっ込む、9.11の映像をテレビで見たときのことから筆を起こす。そのときはまだ運動に参加していなかったECDさんが、徐々にデモなどに参加していく気持ちの動きが描かれている。

ECDさんは、貿易センタービルが白い土煙をたてながら崩れ落ちていくさまを見て、自分自身がその土煙のなかに入っていくような、それまで見えていたと思っていた未来が、まったく見えなくなった気がしたそうだ。

それからECDさんは、まず日記をつけ始める。イラク戦争が開戦すると、その反対運動のデモにはじめて出かける、、、

ていねいに描写されるその過程から見えてくるのは、どこにでもいそうな、一人の当たり前な人間の姿なのである。

 

ECDさんは、ろでぃーさんの写真にたくさん登場する運動参加者の、ある一人。その一人がどのような気持ちで運動に加わっているのかを、ECDさんの文章を読むことで感じ取ることができる。

 

この本は、まだ運動に参加したことがない人にこそ、読んで欲しい。現代の運動について描かれた、もっとも優れたものの一つだといえると思う。

 

運動は、何も特別な人だけがやっているわけではない。

どこにでもいる普通の人が、ただ一歩を踏み出しただけなのだ。

 

価格は、1,728円(税込)。

 









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