「昔のラーメン」を食べるならここ。京都駅・新福菜館本店

2015/08/16

新福菜館本店

京都駅からほど近いところにる、新福菜館本店。「昔のラーメン」が食べてみたいなら行くべきだ。

 

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新福菜館本店は、1938年、戦前に創業された、京都で一番古いラーメン店。しかしどうなのだろう、ラーメン店のほとんどは、古手でも戦後に創業されているわけで、現在でも存続している店の中では、もしかしたら「日本一古いラーメン店」なのではないだろうか。

京都駅の中央口、京都タワーのある方へ出て、東へ行き、高倉通を南に行ったすぐのところにあり、やはり京都ラーメンの、こちらは戦後すぐに創業された老舗店「第一旭たかばし本店」と隣り合わせている。

新福菜館本店

「京都標準」のラーメンともいえる第一旭に負けず劣らず、きちんと行列ができているから、今でもバリバリ現役なのである。

 

新福菜館本店のラーメンは、汁がまっ黒いのが特徴だ。

新福菜館本店

京都では「黒ラーメン」と呼ばれることもあり、また各地に「ブラック」と呼ばれるラーメンがあるが、たぶんその元祖だと思う。

 

郡山へ行ったとき、「郡山ブラック」の発祥店・ますや本店のラーメンを食べた。

ますや本店

乗せられている具や麺などは違うのだが、スープの基本的構成は、新福菜館本店とおなじだった。

東北・岩手や青森には、店名こそ異なるものの、新福菜館ののれんを飾ってあるラーメン店もあるとのこと。

戦後すぐのラーメン店創業者にとって、戦前に創業し、おそらくすでに知名度があったであろう新福菜館本店は、一つの手本となり得る存在だったのではなかろうか。

 

さてこの新福菜館本店のラーメン、たぶん初めて食べた人にとっては、「何のことやら分からない」のではないかと思う。

「醤油臭いだけの味」と感じて、「まずい」とまでは言えないものの、うまいと思える人は少ないはずだ。

実を言えばおれもおなじで、2~3回食べてみても理解できず、その後はしばらく行かなくなってしまっていた。今でも純粋に「ラーメンとしてのうまさ」で言えば、隣の第一旭の方が上だと思う。

 

しかしそのことこそが、新福菜館本店の、他には代えがたい特徴であり、魅力なのだ。

新福菜館本店のラーメンは、戦前のラーメンの味を、そのまま今に残しているのである。

 

ラーメンは、豚肉のスープと、やはり豚肉であるチャーシューに、醤油を合わせる。とんかつに醤油だけかけて食べてもあまりおいしくないように、豚肉と醤油はあまり相性がよくないから、合わせるためには何か工夫が必要になる。

新福菜館本店は、そこをわりとシンプルに、ちょうど魚を煮付けるのと全くおなじ方法で、砂糖を混ぜたコッテリとした醤油のカエシに、たぶん少しのショウガを加えている。

砂糖が入る分、醤油の濃度が高くなるから、スープの色が、ああしてまっ黒になるわけだ。

 

しかしこのやり方だと、魚を煮付ける分にはいいが、肉には不足なのである。

なので新福菜館のラーメンは、どうも焦点がハッキリしない、ぼんやりとした味になっている。

 

それが戦後になって、ラーメン界に「技術革新」ともいえる、画期的なことが起こった。豚肉と醤油を合わせるための素材として、「味の素」と「ニンニク」が登場したのだ。

味の素は明治41年に発明され、戦前にも製造はされていたが、一般に普及したのは戦後のようだ。またニンニクも、戦前は使われることがなかったと聞く。

 

味の素とニンニクが加えられるようになり、いまのラーメンの原型ができ上がったのではないだろうか。ラーメンは、元々中国ではニンニクが、言うまでもなく使われていたのだし、魚介だし由来の成分である味の素も、肉じゃがを魚介だしで煮るとおいしいことから分かる通り、肉と醤油を強力にまとめる働きがある。

味の素とニンニクで味は十分整うから、甘みを加える必要がなくなり、スープの色も薄くなった。

また甘みがあったときには、どうしても似たような味になるために、当時簡単な外食の主流であったであろう「うどん・そば」に対抗するのが難しかったところを、味の素とニンニクにより、うどん・そばとはまったく異なる、独自の味を備えることにもなった。

 

それで戦後、ラーメンは爆発的に発展することになったと思う。

今では完全に、うどん・そばを凌駕してしまったと言えるだろう。

 

ところが新福菜館本店は、この戦後・ラーメン革新の流れに乗らなかったのだ。創業当時の味を変えずに今までやってきて、それで取り残されることもなく、繁盛している。

これは「京都だから」という気がするのである。

 

京都は、古いものを大切にする気風が、色濃くある。古い建物はもちろんのことだし、お好み焼きも、全国では広島以外、ほとんど消滅してしまった「一銭洋食」のスタイルが、いまだにきちんと残っている。

おそらくお客さんが、それを残そうと、古い店に積極的に通うのだろう。そういう京都だからこそ、新福菜館本店の味は残ったのだという気がするのだ。

新福菜館本店は、いわば「ラーメン界のシーラカンス」なのである。

 

この「味を変えない」ということが並大抵なことではないのは、言うまでもないことだ。実際、京都市内にある新福菜館・のれん分けの店は、多くが中途半端に味を変え、その結果、潰れてしまっている。

最も悪手なのは、ニンニクを加えてしまうことで、それをしてしまった丸太町店も河原町店も、今はない。

三条店は、長く頑張っていたのだけれど、1年半ほど前にやはりニンニクを加えてしまい、果たして1年後に潰れてしまった。

 

新福菜館本店は、創業者がまだ存命のようだ。だからこそ、ここまで頑張れているのかもしれない。

 

新福菜館本店は以上のように、まさにラーメンの歴史を体現している店なのだ。

だから「昔のラーメン」が食べてみたいと思ったら、新福菜館本店へ行くべきなのである。

 

麺は、太いめで丸いもの。

新婦菜館本店

これがまたあまりコシがない、ラーメンというよりうどんに近いもので、新福菜館本店のラーメンは、「うどん」だと思って食べれば、期待を裏切られることはない。

 

それから新福菜館本店は、チャーハンがまた独特だ。

新福菜館本店

ラーメンのカエシで炒められているから、まっ茶色。

ただしこれも、味の素があまり使われていないから、味の焦点はやはりちょっとボケている。すぐに「うまい・まずい」で判断してしまうのではなく、「これが昔の味だ」と思い、味わって食べることが必要だ。

 

ビールはもちろん、飲むに決まっている。

新福菜館本店

アテは「朝鮮漬」が、安くて量が多くておすすめだ。

 

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