【雑誌紹介】『SIGHT 4月号』高橋若木氏インタビュー「これからのリベラルはメジャーでストレートな言葉を持つべきだ」

2016/01/03

ツイッターで、『SIGHT』4月号に掲載された、高橋若木氏のインタビューが話題になっていたから、早速買って読んでみた。

SIGHT

3.11以降に生まれた新しい市民運動の旗手のひとりである高橋氏と、ロック評論家・渋谷陽一氏が見事に噛みあい、これからこの運動が、大きなうねりを作り出していくだろうことを予感して、ワクワクした。

 

 
 

『SIGHT』は、ロック雑誌『ROCKIN'ON JAPAN』の増刊号という位置づけになっていて、サブタイトルは「ロックに世界を読む」、ロック評論家・渋谷陽一氏の責任編集だ。

渋谷氏は1951年生まれの64歳、もともとレッド・ツッペリンのLPレコードに入っているライナーノーツを書いたことで名を上げた人で、その後大学在学中にロック雑誌『ROCKIN'ON』を立ち上げ、これは現在ではロック雑誌の主流の一つとなっている。

渋谷氏自身は、評論家稼業より、出版社の経営者としての立場に自分の居場所を見出しているようで、ロッキング・オン社は現在、洋楽を中心とした『ROCKIN'ON』のほか、日本のロック中心の『ROCKIN'ON JAPAN』、映画雑誌の『Cut』などなど、全部で7つの雑誌を発行していて、政治を中心に取り上げる『SIGHT』もその一つとなる。

 

しかし渋谷氏は、ロック評論家としても大きな仕事をした人で、「日本のロック評論に思想性を持ち込んだ」といえると思う。

それまでのロック評論が、ロック・ミュージシャンのファンの立場で、ミュージシャンを無条件にほめ称えていたのに対し、「ロック衝動」という言葉で、ロックの良し悪しを評する視点を与えた。

「ロックとはあくまで、原初的な衝動(=ロック衝動)を表現したもので、それがなく、ただ様式だけロックの真似をしたものには意味がない」

というものだ。

 

渋谷氏は、ロック衝動が具現化されたバンドとして、レッド・ツェッペリンやビートルズなどをあげ、返す刀で、1970~80年代にブームになったジャーニーなどの、ロックを耳障りよくアレンジして大きな売上を上げるバンドを、「産業ロック」と呼んでコテンパンに批判した。

「衝動」などという主観的な言い方で、けなされる方もたまらないのはもちろんで、渋谷氏はずいぶん反感も買ったようだが、しかし音楽が、あくまで主観的に楽しむものである以上、これは外せない視点であると、ぼくは思う。

 

大学を卒業し、ぼくはロックから遠ざかったから、それまで愛読していた『ROCKIN'ON』も読まなくなった。

『SIGHT』もずいぶん前に発刊されたのは知っていたが、読んではいなかったものを、今回高橋若木氏のインタビューが掲載されるというので、久しぶりに渋谷陽一氏の雑誌を買ったわけなのだ。

 

高橋若木氏は、1980年生まれの35歳、肩書は「大正大学講師」だが、安倍ファシスト政権の打倒を目指し、デモなどを行う「TOKYO DEMOCRACY CREW」の主宰メンバーの一人でもある。

差別対抗運動である「カウンター」の現場にも、最初期から参加しているようで、『社会はどう壊れていて、いかに取り戻すのか』(金子勝・高橋若木ほか共著)では、その体験で得た知見を自身の専門である「政治哲学」の文脈のなかで解説していて、ぼくも読んだが面白かった。

ちょっと前には、朝日新聞でも、高橋氏のインタビューが掲載されている。

 

『SIGHT』では、渋谷陽一氏の質問に答える形で、高橋若木氏が、3.11以降に生まれた新しい市民運動と、「旧来のリベラル(自由主義)」との違いについて語っている。

高橋氏によれば、冷戦が終わってからこの25年、保守派・右派は、「時代についていった」のだそうだ。メディアやポピュラーカルチャーを使って新しい大衆を作ったり、それを取り込んでいったりして、アップデートされてきた。

ところがそれに対するリベラル側は、旧態依然とした「左翼」のまま、

思想もアップデートされていないし、語り方も、観察者として漠然とダークなことを言って終わる癖が抜けない。

のだそうだ。

「新しい大衆化」をしないと右派とは競争できないんだ、という前提にアップデートされていない

と、高橋氏は言う。

 

それに対して新しい市民運動が、旧来のリベラルと違うところは、

動き出した大衆のエモーショナル(=感情的・衝動的:高野注)な部分を基本的に肯定すること、群衆的である(=組織的でない:高野注)であること、それから、誰かのためじゃなく自分のためという利己主義

だという。

昔の運動には、運動参加者が「私」を否定するような、ストイックなところがあった。それに対して今の運動は、

私生活の余裕感を大事にする個人主義の人たちが、だからこそ集合的に怒って連携するということがある

のだそうだ。

このことが、旧来のリベラルからは、なかなか理解されないとのこと。

集団的に怒っている人を見ると、「あれ?またまずい・・・」と思ってしまう

ところがあり、これは、1968年に学生運動が挫折した記憶によるのだろうと、高橋氏は言う。

 

ぼく自身も、最近になってデモやカウンターに参加するようになり、この、ツイッターなどで三々五々、人が集まり、あくまで誰のためでもなく自分のために、怒りをストレートに表明する新しい市民運動に、居心地のよさを感じている。

「理屈っぽさ」「組織的な雰囲気」「悲壮感」「ヘルメットにビニールテープの文字などの小汚さ」などがほとんどないので、ぼくのような運動の素人にも、とても参加しやすいのだ。

 

高橋氏は、

選挙のときも、ストリートの運動のときも、スタイリッシュで昔の左翼っぽい汚さがないメジャー感が、大衆的なインパクトを作るために欠かせないんです。それにアレルギーを感じて、普通の人をくさすような古い左翼は、そういう場面にはいらないです。

と語る。

それに対して渋谷氏も、

まったく同感です。僕は今日本で行われている、保守に対する抗議としての、リベラルな言語の非常にアイロニカル(皮肉っぽい:高野注)な現状に、とてもイライラするわけです。なんでもっとストレートに言わないのか。原発も特定秘密保護法も集団的自衛権も誰もが反対している。こんな健全な国民性はないんじゃないかと。

と応ずる。

それにまた、

今の政権を支えているコアな層というのは、保守派の中でさえ異端だったはずなんですよね。あそこまで極端に排外的な言説であったり、なんでも労働者個人の「自己責任」にして雇用条件を悪化させていくような、個人を強調した経済政策の思想は、自民党の中ですら異端だったはずで。それが20年、30年とキャンペーンをやって、情報をひたすら流して、保守派の、そして日本のメインストリームになった。だから3.11以降の運動というのも、社会全体からみればまだ異端だと思うんですが、文化的な起爆力をもったマイノリティが、新しいメジャー感を持ったメインストリームになっていくということが課題だと思うんです。

と、高橋氏は応える。

 

そこで渋谷陽一氏が言った言葉のなかに、ぼくはロック評論家である渋谷氏が、なぜ政治についての雑誌を出版しているのかの理由を見たような気がした。

その訓練をポップミュージックは延々やっているわけですよ。ポップミュージックでは優れた表現をすると勝つんです。強者になり、豊かになる。経済的にも、それから評価としても、マドンナは強者だし、ブルース・スプリングスティーンも、レディオヘッドもジョン・レノンもそうです。彼らは強者であることを引き受けながら、つねに高橋さんの言う、プログレッシブであろうとしているし、クールであろうとしている。そういう機能をずっと担い続けているわけです。それはもうあたりまえの景色で。ビートルズなんて、あんなのメジャーでクソだ、なんて言う人はいないわけです。レディオヘッドなんてインディバンドだったのにあんなに売れちゃってダメだという人もいない。レディオヘッドあんなに売れちゃってすごいよね、と評価するわけです。それはあたりまえのことです。

 

ビートルズが爆発的に売れ出したのが、マネージャーであるブライアン・エプスタインの指導により、それまでのリーゼントに革ジャンの小汚い格好から、襟なしのこざっぱりとしたスーツとマッシュルームヘアにしたことが、大きな要因であったことは知られている。

レッド・ツェッペリンも登場にあたって、それ以前の白人ブルースが持っていた小汚く淀んだ雰囲気を、やはり一掃した。

 

表現の強い衝動をもちながらも、それを普通の人に受け取ってもらえるように洗練させていくこと、、、それこそが、ロックが歩んできた歴史なのだろう。

そう考えると、そのロックの歴史に学べることは、たくさんあるのだろうと思った。

 

『SIGHT』のサブタイトルは「ロックに世界を読む」だが、いままさに、「ロックに運動する」ことが求められているのかもしれない。

もしそのようなロックな運動がこれから展開されていったら、必ずや大きなうねりを作り出していくだろうとぼくには思え、このインタビューを読んでとてもワクワクした。

 

『SIGHT』4月号には、この高橋若木氏のインタビューのほかに、

  • 古賀茂明「マスコミを支配することが、安倍政権のトップ・プライオリティだ」
  • 服部茂幸「アベノミクスは終わったのではない。なかったのだ」
  • 内田樹×高橋源一郎対談「前回の総選挙の結果が示したものは、『選挙が負けた』ということだ」

などなど、まだ読んでいないが面白そうな記事がいくつもある。

全211ページ、定価802円。購入するのはオススメだ。

 

 

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